再生可能エネルギーに関する国際ネットワークREN21は、2015年の再生可能エネルギー新規導入量が過去最高の伸びを示したと発表した。種類別や地域別の状況を紹介する。日本はどのような位置にあるだろうか。
2015年は自然エネルギーの新規導入量が過去最大の伸びを示した(図1)。発電設備容量は世界全体で147GW(1億4700万kW)増加し、年末までに水力発電を除き785GWへ到達した。主役は風力発電と太陽光発電だ。
再生可能エネルギーに関する国際ネットワークREN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century)が、2016年6月1日に発表した年次報告「The Renewables 2016 Global Status Report(GSR2016)」の内容である。
同報告書は、再生可能エネルギーの現状を総合的にまとめており、2015年末までの1年間、どのように再生可能エネルギーの利用状況が発展したのかが分かる。そこで、本誌では複数回に分けて、271ページに及ぶGSR2016の内容の一部を紹介する。
再生可能エネルギー利用は、近年、一貫して増加しているものの、REN21は2015年を記録的な年であると位置付けた。なぜだろうか。
REN21の事務局長であるChristine Lins氏は、発表資料の中で次のように述べている。2015年は化石燃料の価格が歴史的に低かった(産油国の財政が大幅に悪化するほどの規模だ)。それにもかかわらず、再生可能エネルギーが過去最大の伸びを示したことに注目すべきだ。政府の補助金を見ても、不利な状況にあったという。化石燃料に対する約4ドルに対して、再生可能エネルギーへは約1ドルだったからだ。
世界各国で競って再生可能エネルギーの導入が進む理由として、GSR2016では、化石燃料に対して既にコスト競争力を持ったことを挙げている。
コスト競争力が高いことが、別の状況にもつながっていった。再生可能エネルギーを用いた発電設備に対して、2015年、世界合計で投資額が2860億米ドル(約30兆8000億円)に及んだという*1)。さらに2015年は、投資額のうち、半数以上を途上国が占めた最初の年でもあるという。
*1) この投資額には、出力50MWを超える大規模水力と、冷暖房に直接利用される再生可能エネルギーが含まれていない。
REN21で議長を務めるArthouros Zervos氏は、従来型の電源構成、すなわち化石燃料や原子力発電がベースロード電源であるという考え方は時代遅れであり、出力が変動する再生可能エネルギーを最大限利用して、地域分散型、コミュニティー主導型の柔軟性の高い電源システムを作り上げる必要があると主張した。
風力と太陽光においては、政府のリーダーシップ(支援政策)が重要だが、100%自然エネルギーの運動を都市*2)やコミュニティーが急速に広げて来たことが、世界的なエネルギー転換を推し進める主な要因であるとした。
*2) 電力の100%を再生可能エネルギーで得ている地方自治体として、GSR2016はで米国バーモント州バーリントンと同カンサス州グリーンズバーグの名前を挙げている。この他15の地方自治体が100%を目指している。電力だけでなく全エネルギーを再生可能エネルギーでまかなおうとする地方自治体も11挙げられている。そのうち1つは福島県(2040年目標)だ(関連記事)。
次ページ以下では、太陽光や風力などが、どの地域でどの程度成長したのかを、グラフや図表を通じて紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.