連載
» 2016年06月22日 13時00分 UPDATE

再生可能エネルギーの拡大策(3):中小水力発電はコストダウンで普及、低い落差でも電力を作り出す (1/2)

全国いたるところに水が流れ、中小水力発電を実施できる場所は限りなく多い。現在のところ導入コストが高く、開発期間も長くかかるため、期待が大きい割には普及していない。政府は河川の流況データを公開して適地を選びやすくする一方、低コストで導入できる水車の開発を促進していく。

[石田雅也,スマートジャパン]

第2回:「風力発電の導入を法改正で加速、洋上風力も開発しやすく」

 水力発電のうち出力3万kW(キロワット)未満の「中小水力発電」は固定価格買取制度(FIT:Feed-In Tariff)の対象になっている。従来の大規模な水力発電所のように巨大なダムを造って発電するのと比べて、既存の水路や水流を生かせる中小水力発電は環境面でも優れているからだ。

 日本には中小水力発電が可能な場所が河川だけでも2万カ所以上あり、新たな再生可能エネルギーの電力源として期待は大きい。最近になって全国各地で開発プロジェクトが増えてきたものの、太陽光や風力発電と比べて導入量は少ない。最大の要因は建設コストが高いために、20年間の買取期間でコストを回収しきれないリスクがある点だ。

 そこで政府は2017年度に改正するFIT法で数年先まで買取価格を決定して、事業者の開発リスクを低減できるようにする(図1)。と同時に運転開始までの開発期間を短縮できるように、国が保有する河川の流況データなどを事業者に提供する方針だ。小規模な発電設備のコストダウンに向けて、低い落差でも発電できる水車の開発や、水車の中核部品の効率向上にも取り組んでいく。

図1 中小水力発電に関するFIT(固定価格買取制度)法改正と拡大策。出典:資源エネルギー庁

 中小水力発電の開発期間が長くなる理由の1つは、発電設備の設計にあたって流量調査が必要になるためだ。通常は数年から10年程度の流量を調べる。その調査結果をもとに発電設備を設計してから地元と調整に入り、ようやく事業化を決定できる(図2)。出力が1000kW未満の小規模な発電設備でも運転開始までに3〜5年程度かかる。規模が大きくなると5年以上かかるケースも珍しくない。

図2 中小水力発電の開発期間(画像をクリックすると運転開始までを表示)。出典:資源エネルギー庁

 政府は中小水力発電の開発期間を短縮するために、国が保有している河川の流況データや利水計画の情報を集約して事業者に公開する。民間の発電事業者が所有する流量観測データも共有できるようにするほか、新規に開発する事業者を対象に流量調査の費用を補助する制度を2016年度に新設した(図3)。

図3 河川で実施する流量調査(左)、流況曲線による設備設計(右)。出典:資源エネルギー庁

 中小水力発電を実施するにあたっては貴重な水資源を利用することから、地元の理解が欠かせない。発電事業者だけで地域の理解促進に取り組むと難航するケースもあるため、自治体が率先して中小水力発電の導入を推進するように求めていく。実際に中小水力発電が活発に始まっている地域では自治体の支援策が整備されている。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.