次期新幹線は電力消費量を7%削減、駆動システムとバッテリーを小型・軽量に省エネ機器(1/2 ページ)

JR東海は2020年度に投入する次期新幹線の車両製作に着手する。東海道・山陽新幹線の主力車両「N700系」をフルモデルチェンジして電力消費量を7%削減する計画だ。中核の駆動システムを小型・軽量化するほか、リチウムイオンバッテリーを採用して停電時にもトイレを使えるようにする。

» 2016年06月29日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 新たに製作する次期新幹線の車両の名称は「N700S」で、JR東海(東海旅客鉄道)は確認試験車(16両編成)の製作から開始する。N700Sは東海道・山陽新幹線で主力の車両として使われている「N700系」の中で最高(Supreme)の位置づけになる。現行の「N700A」をベースに、先頭車両を「デュアル・スプリーム・ウィング」と呼ぶ形状に変更して走行時の抵抗を低減させる予定だ(図1)。

図 次期新幹線に採用する「N700S」の先頭車両の形状イメージ(画像をクリックすると現行の「N700A」も表示)。出典:JR東海

 N700Aと比べて電力の消費量を7%削減するために、新開発の駆動システムを搭載する点も大きな特徴である。駆動システムは架線から供給する電力を単相交流から三相交流(単相交流を3系統に分割して電力を供給する方式)に変換したうえで、車両を駆動するモーターを効率よく回転させる仕組みになっている(図2)。

図2 次期新幹線の駆動システム(画像をクリックすると拡大)。SiC:炭化ケイ素。出典:JR東海

 JR東海は次期新幹線の車両に搭載する駆動システムに半導体の最新技術であるSiC(炭化ケイ素)を採用した。SiCで作った半導体は発熱量が少なく、冷却装置を簡素化できるために、駆動システム全体を小型で軽量にできるメリットがある(図3)。新開発の駆動システムは従来と比べて重量が20%減り、16編成の車両全体では11トンも軽くなる見込みだ。

図3 駆動システムの小型・軽量化。出典:JR東海

 駆動システムを小型・軽量化することで電力の消費量を低減できるほかに、車両の床下に機器をコンパクトに配置することが可能になる。従来のN700Aでは駆動システムの構成によって8種類の車両を造る必要があったが、新型のN700Sでは4種類に減る(図4)。車両の標準化を図ることで開発・製造コストを削減できるうえに、8両から16両まで運行スケジュールに合わせて車両を編成しやすくなる。

図4 標準化による車種の削減(画像をクリックすると編成状態も表示)。出典:JR東海
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