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» 2016年07月05日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2016年版(11)埼玉:水上式と追尾式で太陽光発電の効率アップ、下水からCO2フリーの水素も (1/3)

日射量が豊富な埼玉県で太陽光発電の効率を向上させる取り組みが進んでいる。水上式で日本最大のメガソーラーが運転を開始する一方、駅前や公園には追尾式の太陽光発電システムが広がる。浄水場では太陽光発電に加えて、下水を利用したバイオガス発電が始まり、水素の製造にも乗り出す。

[石田雅也,スマートジャパン]

 首都圏で人口が密集する埼玉県にあって、ほぼ中央に位置する川島町(かわじままち)は古くから農業が盛んなところだ。町内の農地に水を供給する「梅ノ木古凍(うめのき・ふるごおり)貯水池」の水上には、合わせて2万7000枚にのぼる太陽光パネルが浮かんでいる(図1)。

図1 「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:スマートエナジーサービス

 2015年10月に発電を開始した「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」である。貯水池を所有する地元の土地改良区が水面と陸上の一部を発電事業者に賃貸する方法で運営している(図2)。池の広さは13万平方メートルに及び、半分強のスペースに太陽光パネルを設置した。発電能力は7.5MW(メガワット)に達して、現時点で日本最大の水上式メガソーラーだ。

図2 水上の太陽光パネルと陸上の発電設備の設置状況(画像をクリックすると拡大)。出典:スマートエナジーサービス

 年間の発電量は830万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算すると2300世帯分に相当する。川島町の総世帯数(約8000世帯)の3割弱をカバーする電力になる。土地改良区は水面の貸付料を収入にして農業用水路や貯水池の管理費を軽減できる一方、発電事業者は売電収入で投資を回収する。総投資額は約30億円で、そのうち約21億円を地元の金融機関が融資した。

 埼玉県は日射量が豊富で、住宅用の太陽光発電の導入量では愛知県に次いで全国で第2位の規模を誇る。ただし県内には広い空き地が少ないため、規模の大きなメガソーラーを建設できる場所は限られている。その点で広い池は土地を造成する必要がなく、水面に軽量の架台(フロート)を浮かべて太陽光パネルを設置できる。

 埼玉県には日本初の水上式メガソーラーで知られる「ソーラーオンザウォーター桶川」が稼働中だ。川島町に隣接する桶川市の工業団地の中で、調整池の水面を利用して2013年に運転を開始した。4500枚の太陽光パネルを水上に設置して1.2MWの発電能力がある(図3)。川島町の水上メガソーラーと比べると規模は約6分の1である。

図3 「ソーラーオンザウォーター桶川」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:ウエストエネルギーソリューション

 運営するウエストエネルギーソリューションによると、陸上に建設する場合と比べて水上の太陽光発電設備にはメリットがいくつかある。1つは池などの中央部分に太陽光パネルを設置できるため、周囲に障害物がなくて日影ができにくい。もう1つは太陽光がパネルに当たって温度が上昇すると、発電効率が低下してしまう問題がある。水上では水の冷却効果によってパネルの温度上昇を抑えられる。

 さらに環境面でもメリットが期待できる。水面に並べたフロートが太陽光を遮断して、水中に藻類が異常に繁殖する問題を防ぐことができる(図4)。特に「アオコ」と呼ぶ青緑色の藻類が水面を覆い尽くすと、水質を悪化させて魚類の生息に影響を与えてしまう。

図4 「ソーラーオンザウォーター桶川」のフロート(上)、環境面の効果(下)。出典:ウエストエネルギーソリューション

 一方で水上式の場合には、風が吹くと波が起こって太陽光パネルが揺れる。太陽光パネルが揺れると発電効率に影響を及ぼす可能性があるため、いかに揺れを抑えるかが大きな課題だ。さらに水上の発電設備を点検・補修する作業も陸上に比べると手間がかかる。今のところ陸上式と比べて一長一短あるが、国土の狭い日本で太陽光発電を拡大する有効な方法の1つであることは間違いない。

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