水素製造と水素発電を2020年代の前半に、「福島新エネ社会構想」が動き出す自然エネルギー(1/2 ページ)

福島県を再生可能エネルギーと水素エネルギーのモデル地域として発展させる「福島新エネ社会構想」の具体案がまとまった。2020年代を当面の目標に設定して、再生可能エネルギーからCO2フリーの水素を大量に製造するプロジェクトをはじめ、石炭ガスと水素を混焼発電する実証にも取り組む。

» 2016年09月12日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 政府が2016年3月から検討を進めてきた「福島新エネ社会構想」の具体案がまとまり、9月7日に福島県内で開いた会議で実施内容を決定した。「福島全県を未来の新エネ社会を先取りするモデル拠点」として発展させることを目指して、3つの分野で先進的なプロジェクトを推進していく(図1)。

図1 「福島新エネ社会構想」の骨子と主要プロジェクト(画像をクリックすると「イノベーション・コースト構想」も表示)。【 】内は2017年度の概算要求額。出典:経済産業省

 すでに福島県内で実施中の「イノベーション・コースト構想」を加速させる方向で、「再エネの導入拡大」「水素社会実現のモデル構築」「スマートコミュニティの構築」に注力する。2017年度予算の概算要求では総額754億円を割り当てた。当面は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目標に、世界で最先端のエネルギー社会のモデルを構築する。

 第1のテーマである再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、最初に取り組むのは送電線の増強だ。福島県の太平洋沿岸から内陸にかけて広がる「阿武隈・双葉エリア」を中心に送電線を増強する。2016年度中に事業ポテンシャルの調査と送電線敷設のFS(フィージビリティスタディ)の調査を実施する(図2)。

図2 再生可能エネルギーの分野のロードマップ(一部を抜粋)。出典:経済産業省

 調査した結果をもとに風力・太陽光発電事業者と東京電力・東北電力が新事業体を設立して、2030年度までに阿武隈・双葉エリアの送電線を増強する。阿武隈・双葉エリアは風況と日射量に恵まれているため、送電線の整備と並行して風力・太陽光発電所を拡大していく。2017年度に100億円の予算を事業者の支援に割り当てる方針だ(図3)。

図3 福島県における再生可能エネルギー導入促進のための支援事業。出典:経済産業省
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