太陽光発電とバイオマスがCO2を減らす、古都で進む温暖化対策エネルギー列島2016年版(26)京都(1/3 ページ)

地球温暖化対策の象徴的な都市でもある京都市では、2030年までにCO2排出量を40%削減する目標を掲げている。市民を巻き込んだ太陽光発電プロジェクトが着実に広がり、廃棄物を利用したバイオマス発電も拡大中だ。水素エネルギーの普及にも産学官の連携で取り組んでいく。

» 2016年10月18日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 京都市の西側に広がる亀岡市のゴルフ場の跡地に、京都府内では珍しい大規模なメガソーラーが2016年8月に運転を開始した(図1)。大阪いずみ市民生活協同組合が建設した「京都・亀岡太陽光発電所」で、発電能力は7.5MW(メガワット)に達する。

図1 「京都・亀岡太陽光発電所」の全景。出典:大阪いずみ市民生活協同組合

 約50万人を抱える生協の組合員に供給する再生可能エネルギーの電力を増やすことが目的だ。年間の発電量は976万kWh(キロワット)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して2700世帯分に相当する。発電した電力は小売電気事業者に売電したうえで組合員に販売する体制になっている。

 亀岡市のメガソーラーが稼働して太陽光発電の導入量が増えたとはいえ、京都府内では利用できる土地や資源が少ないこともあって、再生可能エネルギーの導入量は他県ほど増えていない。そうした状況の中で、中核の京都市は地道な活動を通じて再生可能エネルギーの導入に取り組んできた。

 代表的なプロジェクトが、2012年に開始した「市民協働発電制度」である。京都市が所有する施設の屋根などを利用して、市民の出資で太陽光発電所を運営する(図2)。市内で環境活動に取り組む一般社団法人が運営主体になり、売電で得た利益を出資者に還元する仕組みである。

図2 「市民協働発電制度」の事業スキーム。出典:京都市環境政策局

 この制度を適用した太陽光発電設備は2015年末までに9カ所で稼働した。発電能力は合計で389kW(キロワット)になり、1カ所あたり平均で43kWである。そのうちの1つが「京都市立深草小学校」の校舎の屋上の一角で、2014年9月から電力の供給を続けている(図3)。

図3 「京都市立深草小学校」の屋上で稼働する市民協働発電所。出典:市民エネルギー京都

 53kW分の太陽光パネルを設置して、最初の1年間に5万8000kWh余りの電力を供給した。一般家庭の16世帯分に相当する電力で、当初の想定値を2割以上も上回った。夏の時期には小学校の生徒や教職員が校内の消費電力を調査して節電対策にも取り組んでいる。

 京都市では1997年に地球温暖化防止をテーマにした国際会議を開催して、「京都議定書」を採択した実績がある。1990年を基準年に主要国がCO2の削減に取り組むことに合意した。日本は2008〜2012年の期間に6%削減する目標を達成したが、実際の排出量は想定どおりに減っていない。

 温暖化対策のシンボルになった京都市でも東日本大震災後にCO2排出量が増加したため、改めて2020年と2030年の削減目標を設定した(図4)。2030年の排出量を1990年比で40%削減する目標で、国が設定した18%(2013年比で26%)を大きく上回る。この意欲的な目標を達成するためには、自動車や建築物の省エネを促進しながら、再生可能エネルギーの導入量を拡大していく必要がある。

図4 京都市の温室効果ガス排出量の推移と削減目標。出典:京都市環境政策局
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