インターネットの拡大に伴って全世界で膨張を続けるデータセンターでは大量の電力を消費する。停電時にも電力を供給し続けるために、蓄電池を内蔵した給電システムが不可欠だ。通常の交流による電力の供給方法に代わって、高電圧の直流を使った給電システムが新たな節電対策になる。
NTTグループが全国各地で運営する200カ所以上のデータセンターや通信ビルでは「HVDC給電システム」を導入している。HVDC(High Voltage Direct Current)は高い電圧の直流で電力を供給する方式だ。大量の電力を消費するサーバーや通信装置などのICT(情報通信技術)機器に対して、効率よく電力を供給できるメリットがある。
太陽光発電事業やデータセンター事業を手がけるNTTファシリティーズが、低価格のHVDC給電システムを10月19日に販売開始した。このシステムを使うと、電力会社が供給する200V(ボルト)の交流を380Vの直流に変換して、高い電圧のままICT機器に電力を供給できる(図1)。
通常のデータセンターでは交流のまま電力を供給する方式が一般的だが、ICT機器に送る前に無停電電源装置(UPS)を通す必要がある。停電が発生しても電力の供給を止めないための対策だ。UPSの内部では蓄電池(バッテリー)を使って充電・放電する仕組みになっている(図2)。
UPSの充電時に交流から直流へ、放電時に直流から交流へ、2回の電力変換が必要で、そのつど電力を損失する。さらにICT機器の内部でも交流から直流に変換したうえで、最適な電圧の直流に2回目の変換が必要になる。こうして合計4回の変換を経てサーバーのCPU(中央処理装置)などに電力が送られる。
一方のHVDC方式では、電力会社から受けた交流を直流に変換して蓄電池に充電した後に、直流で放電した電力をそのままICT機器に供給することが可能だ。ICT機器の内部では1回だけ直流−直流の変換が必要だが、合計2回の変換で済むために電力の損失が少ない。電力の変換回数を4回から2回に減らすことで、消費電力量を20%削減できる。
HVDCに対応したICT機器は日本ヒューレット・パッカードやシスコシステムズなどが販売している。NTTファシリティーズによると、HVDC対応のICT機器の価格は通常の製品と同程度である。
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