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» 2016年11月24日 13時00分 UPDATE

法制度・規制:石炭火力「全廃」へ、英国・フランス・カナダ (1/3)

フランス、英国、カナダが石炭火力発電を廃止する政策目標を発表した。フランスは2023年、英国は2025年、カナダは2030年を目標とする。なかでも具体的な政策の内容に踏み込んだのは英国だ。英国政府は、老朽化していない石炭火力発電所を全廃する方法について、2つの政策オプションを提示。コストやエネルギー保障の観点から、国民が判断できる形とした。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 二酸化炭素の排出量を抑制するレースで、先進国が石炭火力から離脱する流れが生まれた。フランスは2023年、英国は2025年、カナダは2030年までに石炭火力を廃止することを発表。

 国連の「気候変動枠組み条約第22回締結国会議(COP22、2016年11月7〜19日)」では、二酸化炭素排出量削減を目指す「パリ協定」の実施に当たって、詳細なルール作成を2018年までに完了することで合意した。これに先駆けた形だ(関連記事「2040年のエネルギー、日本はどうなる」)

 IEAによれば、全発電量に占める石炭火力の割合(2014年)は、フランスが2.1%(化石燃料全体の比率は4.7%)、英国が30.1%(同60.3%)、カナダが9.9%(20.4%)*1)。日本は33.5%(同85.1%)であり、石炭火力の比率は英国に近い(図1)。

*1) カナダは世界第13位の石炭産出国(3200万トン、2014年)であり、州によっては石炭火力への依存率が40%に達しているため、単純に全廃することは困難だと考えられている。なお、カナダは世界第8位の石炭輸出国(2015年)。2014年時点で日本が同国から輸入した品目のうち、最大のものが石炭だ

図1 各国の電源別年間発電量(2014年) 石炭火力発電の比率を示した 出典:IEAの統計資料を基に本誌が作成

 3カ国の中で、具体的な政策の内容に踏み込んだのは、英国だ*2)。英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(DBEIS:Department for Business, Energy & Industrial Strategy)*3)は、2016年11月9日、英国に立地する石炭火力発電所の閉鎖についてプロポーザルを提示。老朽化していない現役の石炭火力発電所を対象とし、どのように廃止するのか、国民の意見を求めた形だ。

 2025年までに合計約11.5GW(1150万kW)を廃止する。大型原子炉11基以上に相当する出力である。

*2) 前回のCOP21の期間中、英国政府は、英国内の石炭火力発電所の利用を2023年までに停止し、2025年までに全廃することを表明していた。今回、実行に向かって一段階進んだ形になる。
*3) 英国政府は2016年7月に旧エネルギー気候変動省(DECC)をビジネス・イノベーション・技能省(BIS)と統合し、DBEISとした。発表当初は、経済政策を優先し、気候変動政策を後退させるものだという批判を浴びた。

政策による市場介入が必要な理由は3つ

 発電市場に対して英国政府が介入する理由は3つあるとした。政治的な理由が1つと、市場の失敗に基づく理由が2つだ。

 政治的な理由は単純だ。英国が二酸化炭素排出量削減のリーダーであることを示す、というもの。

 市場の失敗とは、需要と供給に基づく価格調整の仕組みによって、経済的に最適ではない状態に至ったことをいう。化石燃料のうち、石炭は最も二酸化炭素排出量が多い。ある量の電力を生み出す際、石炭火力発電所は天然ガス火力発電所と比較して、約2倍の二酸化炭素を排出する。それ以外の有害排出物もある。これらの排出物が発電コストとして計上されていないことを、市場の失敗として取り上げた。

 もう1つの市場の失敗は、将来のエネルギーミックスにおける石炭の役割がはっきりしないことから生じる。ガス火力などの二酸化炭素排出量の少ない発電所、これを今建設することが有利なのかどうか、不確実性が残った場合、新規投資の判断が鈍るからだ。

石炭火力を廃止しなくても「0」になる

 今回のアセスメントでは、石炭火力発電を巡る市場環境について2つの前提条件を挙げ、それぞれ3つの政策を示した。前提条件の内容はこうだ。石炭火力にとって幾分不利だが、実現する可能性が高い外部条件を仮定した「セントラルシナリオ」と、実現の可能性が低い石炭火力に有利な条件「ハイシナリオ」だ。

 セントラルシナリオでは、2030年における1トン当たりの炭素排出コストを70ポンド(約9700円)とし、ハイシナリオでは同じく18ポンドと仮定した。ハイシナリオでは二酸化炭素排出のペナルティが低い。石炭価格や二酸化炭素排出量の少ない火力発電の容量などの仮定もある。

 2つの前提条件、それぞれについてまず何もしない場合を予測した。セントラルシナリオでは2022年に石炭火力がなくなる。政府の規制がないにもかかわらず(図2)。ハイシナリオでも2031年には0になる。

図2 規制がない場合の石炭火力の発電容量 出典:DBEIS
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