計画中の洋上風力発電プロジェクト取りやめ、コストと風況が想定から外れる自然エネルギー(1/2 ページ)

茨城県の沖合で計画していた2つの洋上風力発電プロジェクトのうち1つが取りやめになった。事業予定者の丸紅が茨城県に申し入れたもので、国内最大の洋上風力発電計画は見直しを迫られる。取りやめの理由は建設コストが想定を上回り、一方で発電量を左右する風況が想定よりも悪いと判断した。

» 2017年01月13日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

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 島国の日本で再生可能エネルギーの拡大に向けて期待が大きい洋上風力発電。その前途に暗雲が立ち込める事態が発生した。茨城県の鹿島港の沖合を対象に2012年から洋上風力発電プロジェクトが始まり、県の公募で選ばれた2社が個別の事業計画をもとに開発を進めてきた(図1)。それぞれ最大で25基の大型風車を建設する国内最大級の洋上風力発電プロジェクトである。

図1 鹿島港洋上風力発電事業の実施場所と風車配置計画(画像をクリックすると拡大)。出典:NEDO

 ところが2社のうち丸紅が2016年12月末になって事業の中止を茨城県に申し入れ、年明けの1月10日に茨城県は事業予定者の取り消しを決定した。改めて2月をめどに公募を実施して事業予定者を選定する方針だが、プロジェクト全体の進捗が大きく遅れることが確実になった。

 洋上風力発電事業の対象になっている場所は、鹿島港を中心に広がる鹿島臨海工業地帯の沖合600〜1600メートルの海域だ。全体で680万平方メートルに及ぶ海域を北側と南側の2つの区画に分けて、北側をウィンド・パワー・エナジー、南側を丸紅が事業予定者として開発を進めてきた(図2)。

図2 洋上風力発電事業の対象区画と事業予定者。出典:茨城県土木部

 ウィンド・パワー・エナジーは鹿島港の近くで洋上風力発電所を運転している実績があり、ソフトバンクグループのSBエナジーやオリックスから出資を受けて「大規模洋上風力発電所 メガサイト鹿島」の建設プロジェクトを推進中だ(図3)。1基の発電能力が5MW(メガワット)の大型風車25基を設置する計画で、すでに2015年11月に陸上の工事に着手している。

図3 「大規模洋上風力発電所 メガサイト鹿島」の完成イメージ。出典:ウィンド・パワー・グループ

 一方の丸紅は茨城県から事業予定者に選定されて以降、事業化に向けた調査を実施したものの、当初の想定どおりに事業の採算を見込めないことが判明して取りやめを決定した。茨城県と丸紅の担当者によると、主な理由は2つある。1つは洋上風力発電所の建設コストが想定を上回ったことだ。

 2012年に計画した当時は、数年後に建設に着手する時点になれば風力発電機のコストが低下することを見込んでいた。しかし実際には想定ほど下がらずに、建設コストが上振れする可能性が高まった。国内で風力発電の導入量がさほど伸びていないために、量産効果によるコストダウンが進んでいない状況が背景にある。

 もう1つの理由は風況の問題だ。風力発電は風速や風向によって発電量が決まるため、安定した強い風が年間を通して吹きつける風況が求められる。洋上風力の場合には、年間の平均風速が7メートル/秒以上になる場所が望ましい。

 固定価格買取制度による洋上風力の買取価格は36円で、年間の平均風速が7メートル/秒で採算がとれることを前提に設定している(図4)。丸紅は採算性の評価について詳細を公表していないが、風況を調査した結果、年平均風速が7メートル/秒に達しない見通しを立てた模様だ。

図4 洋上風力発電のコストと年平均風速(上)、固定価格買取制度の買取価格と算定根拠(下)。IRR:内部収益率。出典:NEDO、資源エネルギー庁
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