原子力発電所が稼働中の鹿児島県・薩摩川内市で新たにメガソーラーが運転を開始した。地元の企業などが出資する自然エネルギーのファンドを通じて運営する。山間部の北向きの斜面でも発電量を増やせるように太陽光パネルを5度で設置した。年間に550世帯分の電力を供給できる見込みだ。
メガソーラーが運転を開始した場所は、薩摩川内市の海岸線から内陸に20キロメートルほど入った「入来町(いりきちょう)」にある(図1)。周囲に山が連なる3万5000平方メートルの土地を利用して建設した。
もともと地権者が山林を開拓して、公園と段々畑を造成した場所だった。そのためメガソーラーの名称を「薩摩川内開拓跡地太陽光発電所」と付けた。開拓した跡地に約6800枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は1.8MW(メガワット)ある(図2)。2016年6月に着工して年末の12月28日に運転を開始した。
年間の発電量は199万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して550世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度を通じて九州電力に売電する方針だ。2013年度に設備の認定を受けたため、買取価格は36円(税抜き)になり、年間の売電収入は約7200万円を見込める。
用地が北向きの斜面だったため、太陽光パネルの設置角度を5度に抑えて発電量を増やせるように工夫した。北向きの斜面で通常の南向き30度で設置すると、朝や夕方にパネルの横方向から当たる日射量が少なくなって発電量が減ってしまう。パネルを5度に設置することで太陽光を受けやすくなり、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を標準値の13%で維持できる見通しだ。
発電事業者は全国各地に150MWを超える太陽光発電所を展開する自然電力グループである。自然電力のほかにグリーンファイナンス推進機構や地元企業が出資する「南九州自然エネルギーファンド」の資金を使って建設・運営する(図3)。
総額7億円のファンドを通じて、日射量が豊富な南九州の3県(鹿児島、宮崎、熊本)を対象に、5カ所程度の太陽光発電所を建設する計画だ。3つの県にある遊休地の利用を前提に、発電事業の収益の一部を地元に還元して地域の活性化に役立てる。
現在までに宮崎県で2カ所の太陽光発電所を運転中だ(図4)。新たに稼働した薩摩川内市のメガソーラーを加えると、3カ所の合計で発電能力は4.7MWになる。いずれのプロジェクトも最初の1年間の収益をもとに、地元に還元する方策を協議して決定することになっている。同様のスキームで今後も2カ所をめどに太陽光発電所を建設していく。
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