電力×IT・デジタル――エネルギービジネスへのIoT活用3分で分かるこれからの電力業界(6)(1/3 ページ)

「電力小売業界」への就職・転職を目指す方に、急速に変化・多様化する業界動向を分かりやすく解説。今回は最先端テクノロジーに触れながら新しい発想で未知のビジネスを創出していく「電力×IoTの世界」にフォーカスする。

» 2017年02月02日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

トレンドワード「電力×IT・デジタル」

最先端テクノロジーに触れながら新しい発想で未知のビジネスをクリエイト!


スマートメーターが鍵を握る「電力×IoT」の世界

 今、新たな電力関連ビジネスへのITの活用が重要な課題となりつつあります。また今後の電力業界では「IoT」(注1)が一つの大きなテーマになると言われています。

 IoTがどのように電力と関係するかというと、分かりやすいものでは、離れた場所からエアコンや照明の電源を入切することや、給湯器、風呂釜などさまざまな機器の状態モニターやリモコン制御などをすること、また家電をインターネットに接続しバージョンアップしていくことなどが挙げられます。

 こうしたIoT分野で重要な役割を果たすのが「スマートメーター」です。スマートメーターとは、通信機能を持ち、電気の使用量を遠隔で検針したり、30分ごとの使用量を計測したりできる電気メーター(電力量計)のことです。従来の電気メーターでは1カ月に1度の検針であるため、リアルタイムに電力消費量を把握することができませんでした。しかしスマートメーターはその弱点を克服できるため、IoT活用のサービスにおいて多様な展開が期待されています。

注1 IoT(Internet of Things):人、動物、機械など、あらゆるモノをインターネットに接続する構想。人間が自らの意思をもってコンピュータを使ってインターネットへ接続するのではなく、さまざまなデバイスやモノが自動でインターネットへ接続して情報をやり取りできるようになる。

「エネルギーマネジメント」という新しいビジネス

 今後スマートメーターのデータを集積した機器の最適な自動制御など、電力を効率的に利用する「エネルギーマネジメント」を行う事業が広がっていくと考えられます。エネルギーマネジメントとは、単に電気を省くだけでなく、電気を“作る”“蓄える”ことを視野に入れて電力を管理・制御する、という考え方です。

 また、リアルタイムの電力需給に応じたエネルギー管理が可能となるので、電力会社などと需要家の契約に基づき、ピーク時間帯に節電するといったことも可能となります。ピーク時間帯に節電してくれた見返りとして、電力会社が需要家に対して報酬を支払うことを「デマンドレスポンス」といいますが、そうした新しい電力利用の形も生まれますので、新電力企業にとってはビジネスの幅が広がることにつながります。

 このような新しい形の電力ビジネスに特化した事業を行っている会社は例えば、株式会社リミックスポイント、株式会社エナリスなどです。

 エナリスは事業の基軸を、電力流通プロセスにおけるエネルギー情報を管理・提供する「エネルギー情報業」と位置付け、エネルギーマネジメントのほか電源開発、電力トレーディング、新電力向け業務代行など、次世代型のサービスやビジネスを展開しています。

 今後IoTを中心にスマートグリッド(注2)、デマンドレスポンス(注3)、VPP(注4)、ネガワット取引(注5)など新しい技術やシステムが急速に広がっていくと予測されます。そうした潮流の中で、IT・デジタルに軸を据えた新しい電力サービス会社が今後さらに増えていくだろうと思われます。

注2 スマートグリッド:最新の IT技術を活用して電力供給、需要に係る課題に対応する次世代電力系統とされる概念。

注3 デマンドレスポンス:系統に負担がかかっている時間帯などに電力利用を抑制し節電に協力することで、経済的なインセンティブ(対価)が得られるような仕組み。

注4 VPP(Virtual Power Plant): 各地に分散している創エネ・蓄エネ・省エネリソース(太陽光、蓄電池、デマンドレスポンスなど)を、IoTを活用して統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させること。

注5 ネガワット取引:節電や自家発電によって需要量を減らした分を“発電”とみなして、電力会社が買い取ったり市場で取引したりすること。

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