変換効率で新記録19.2%、CIS太陽電池蓄電・発電機器(1/2 ページ)

シリコンを用いないCIS薄膜太陽電池の出力が高まる。ソーラーフロンティアは2017年2月27日、30cm角のモジュールにおいて、変換効率が19.2%に達したと発表。全てのタイプの薄膜太陽電池モジュールのうち、最高の数値であるというという。

» 2017年03月03日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 薄膜太陽電池モジュールで変換効率19.2%という世界記録が生まれた*1)

 CIS薄膜太陽電池を開発・販売するソーラーフロンティアが2017年2月27日に発表したもの。一辺の長さが30センチメートル(cm)の正方形の太陽電池モジュールを開発、産業技術総合研究所が測定した*2)

 開発現場は同社の厚木リサーチセンター(図1)。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究の成果である*3)

 今回開発した技術を宮崎県に立地する同社の国富工場で適用、2017年夏には量産品を製造する計画だ。「現在最も出力が高い主力製品『SF175-S』(175W)の上位製品となる」(ソーラーフロンティア)。

*1) ソーラーフロンティアによれば薄膜太陽電池の世界記録はこれまで同社の17.8%(2012年2月)だった。「Progress in Photovoltaics誌」(米John Wiley&Sons)に掲載された「Solar cell efficiency tables(version 49)」(2016年11月28日公開)によれば、薄膜太陽電池モジュールの変換効率の記録は、米FirstSolarによるCdTe太陽電池において、18.6±0.6%(モジュール面積7038.8cm2)。次いでソーラーフロンティアによる17.5±0.5%(同808cm2)。
*2) 841cm2の領域をマスクで開口して測定した。
*3) NEDOの「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトのうち、「先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」における成果。2017年度末の中間目標は試作モジュールにおいて、発電コスト17円/kWh相当の性能を確認すること。そのためにモジュール変換効率15%、モジュール出力劣化20年で20%相当を狙う。2019年度末の最終目標は、同14円/kWh相当の性能の確認。モジュール変換効率16%、モジュール出力劣化25年で20%相当で実現する。

図1 ソーラーフロンティア厚木リサーチセンターの開発チームと開発した30cm角のCIS太陽電池サブモジュール 出典:ソーラーフロンティア

シリコン太陽電池にない特徴を備える

 世界市場において、出荷数量の約9割を占めるのはケイ素(シリコン)を発電層に用いた結晶シリコン太陽電池だ。

 これ以外の約1割を薄膜太陽電池が占める。薄膜太陽電池のほとんどはCIS太陽電池か、CdTe太陽電池が占めており、薄膜シリコン太陽電池が次ぐ。

 CIS太陽電池ではシリコンを利用していない。光を吸収して電流に変える発電層には銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)という3つの元素を主に用いる。

 CIS太陽電池は(結晶)シリコンと比較して光を吸収する能力が高いため、発電層の厚さを約100分の1*A-1)に抑えることができる。資源をあまり使わずに製造でき、製造時のエネルギーも少ない*A-2)

 薄膜太陽電池の強みはもう1つある。基板上に成膜した1枚のモジュールをレーザーなどによって短冊状のセルに切り分けた構造を採るため、影がかかった場合の影響が少ない。住宅の屋根などへ設置する場合に適する性質だ。

*A-1) シリコン太陽電池の発電層の厚みは1000分の200ミリメートル程度(200μm)、CIS太陽電池は1〜2μm。
*A-2) 太陽電池の製造時に消費したエネルギーを、何年間の発電によってまかなうことができるかという数字を「エネルギーペイバックタイム」と呼ぶ。多結晶シリコン太陽電池は約2.2年、CIS薄膜太陽電池は約1.4年(2009年公開のNEDO報告書による)。

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