太陽・風・水・地熱・森林に恵まれた南国に、CO2フリーの電力が広がるエネルギー列島2016年版(45)宮崎(1/4 ページ)

自然にあふれる宮崎県には再生可能エネルギーの資源が豊富だ。全国屈指の日射量を生かして大規模なメガソーラーが運転を開始する一方、風力発電と小水力発電の導入が活発に進んできた。地熱発電やバイオマス発電のプロジェクトも始まり、5種類の再生可能エネルギーすべてが拡大する。

» 2017年03月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 宮崎県の北部にそびえる大仁田山(おおにたやま)の尾根に沿って、新しい8基の大型風車が並んでいる(図1)。2016年9月に運転を開始した「中九州大仁田風力発電所」だ。風車1基の発電能力は2MW(メガワット)で、合わせて16MWの電力を供給できる。

図1 「中九州大仁田風力発電所」の全景。出典:ジャパン・リニューアブル・エナジー

 年間の発電量は4100万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万1400世帯分に相当する。風車が建つ尾根は五ヶ瀬町(ごかせちょう)と諸塚村(もろつかそん)にまたがっていて、2つの自治体の総世帯数(合計で約2000世帯)の5倍以上の電力を供給できる。

 全国に20カ所以上の太陽光・風力発電所を展開するジャパン・リニューアブル・エナジーが運営する。建設した場所は標高が1000メートル以上もあり、南国の宮崎県といえども冬には地盤の凍結や降雪に見舞われる。工事の中断を余儀なくされることも多く、着工から完成まで2年間かかった。

 それでも風力発電所を建設するメリットは大きい。北部の山岳地帯は風況に恵まれていて、年間の平均風速が6.5メートル/秒を超える場所が数多くある(図2)。平均風速が5.5メートル/秒以上になると風力発電に適していることから、十分な発電量を見込める立地条件だ。年間の売電収入は9億円にのぼり、事業期間の20年では180億円をもたらす。

図2 宮崎県の風況。出典:宮崎県環境森林部(環境省のデータをもとに作成)

 宮崎県では南部にも風況に恵まれた地域が広がっている。最南端の串間市では、海の近くまで迫る山の尾根に風力発電所を建設中だ(図3)。1基の発電能力が2.85MWの大型風車23基を設置して、合計で65MWに達する。鹿児島県で運転中の「長島風力発電所」(50MW)を抜いて九州で最大の風力発電所になる。長島風力発電所と同様に九州電力と九電工の共同プロジェクトである。

図3 「串間風力発電所」の建設予定地。出典:九州電力、九電工

 運転開始は2020年10月の予定だ。年間の想定発電量は公表していないが、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を風力発電の標準値25%で計算すると1億4000万kWhにのぼる。一般家庭の3万9000世帯分に相当する電力になる。串間市の総世帯数(7900世帯)の5倍に匹敵する電力をCO2(二酸化炭素)の排出量ゼロで供給できる。

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