FITの二歩先を行く、世界初の分散太陽光市場法制度・規制(1/2 ページ)

太陽光で発電した電力、それを蓄える蓄電池。家庭や企業が所有するこれらのリソースを分散エネルギー源として積極的に利用する取り組み「deX」が2017年6月からオーストラリアで始まる。固定価格買取制度(FIT)、自家消費、さらにその次を実現する形だ。

» 2017年03月10日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 石炭大国オーストラリアは、再生可能エネルギーへと急速に舵を切っている。太陽発電システム(太陽光)の導入量が急増しているだけではない。今後は発電した電力の融通について世界初の取り組みを始める。

 太陽光と蓄電池を導入した家庭や企業が自由に参加する分散エネルギー取引所「deX(Decentralised Energy Exchange)」の開設だ*1)

 2017年6月からパイロットプログラムを開始。主導するのは系統内で電力資源をどのように利用するか、ソフトウェアによって最適化を進める企業GreenSyncだ*2)

 同社によればdeXの開設によって、再生可能エネルギーへのより効果的な投資が促されるため、インフラへの不必要な数十億ドルの投資を避けることを可能にするという。

 同社の創業者でありCEOでもあるPhil Blythe氏(図1)は、発表資料の中で次のように述べている。「オーストラリアの屋根の15%以上に太陽光発電設備が載っている。これら全てが協働して系統を補うことができれば、再生可能エネルギーがより一層普及する。エネルギーミックスを進める際、再生可能エネルギーの信頼性が高まり、不規則な発電が問題にならなくなる」。

*1) オーストラリア政府が設立したARENAが資金を提供し、GreenSyncが主導する。系統管理を担う2社(United EnergyとActewAGL)、エネルギー関連のスタートアップ企業2社(GreenSyncとReposit Power)、新規にエネルギー小売りを開始した1社(Mojo Power)が参加する。
*2) 首都キャンベラを含む特別地域(ACT)と同国南東部に位置するビクトリア州の州政府の他、オーストラリア国立大学、オーストラリアエネルギー市場オペレーター(AEMO)、オーストラリアエネルギー市場委員会、オーストラリアエネルギー消費者局などの各種団体が支援を予定する。

図1 deXを主導するオーストラリアGreenSyncの創業者兼CEOであるPhil Blythe氏 出典:GreenSync

FITの二歩先を行く

 固定価格買取制度(FIT)や再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)など、再生可能エネルギー導入を促す政策は国ごとにさまざまだ*3)

 例えばFITによって太陽光の導入量が十分増えたとしよう。現在の日本のような状況だ。その後、計画的にFITの買取価格が下がっていき、最終的には0になる。FITを導入した全ての国がこのような流れをたどる。

 その後は発電した電力を家庭や企業が自家消費することになる(図2)。買取期間中に導入コストを償却しているため、系統から電力を購入するよりも安く付く(本文末の囲み記事参照)。

 だが、自家消費だけでは太陽光の能力を十分に生かしてはいない、さらにもう一歩前進できるのではないかという発想が、deXを生み出した。

*3) オーストラリアは2001年に全国的なRPS制度を導入、2007年にはFIT制度を導入したものの、全国統一ではなく、州ごとに内容が異なる。

図2 オーストラリアの都市部郊外で普及する太陽光発電 出典:pixabay(MemoryCatcher氏)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.