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» 2017年04月18日 07時00分 UPDATE

蓄電・発電機器:安価な燃料電池へ前進、”世界最高”の水酸化物イオン伝導性ナノシート (1/2)

物質・材料研究機構(NIMS)は、層状復水酸化物ナノシートが実用化済みの燃料電池に用いられているNafionのプロトン伝導率に匹敵する酸化物イオン伝導性を示すことを発見した。高価な白金を利用しないアルカリ燃料電池の実用化などに寄与する成果という。

[庄司智昭,スマートジャパン]

「世界最高」の酸化物イオン伝導性

 クリーンなエネルギー変換技術として注目されている燃料電池。電解質として水素イオン伝導体(Nafionなど)を用いる方式が主流であるが、強酸性環境中での動作となるため、使える触媒が白金系金属に限定されるなどの制約がある。

 水素イオンの代わりに水酸化物イオンを用いる方式も可能である。アルカリ性環境中での動作となり、遷移金属元素を触媒として使用できるため、コストを大幅に低減することが期待できる。しかし既存の水酸化物イオン伝導体は、水酸化物イオンの伝導率が10-3〜10-2S/cmと低いことが大きな課題となっているという。

80%RHと60℃の環境下で、ほぼ10-1S/cmに達していることが分かる (クリックで拡大) 出典:NIMS

 実用化には、水素イオン伝導体に匹敵する10-1S/cm前後のイオン伝導率を持つ材料が求められる。物質・材料研究機構(NIMS)の馬仁志氏、佐々木高義氏らの研究グループは、層状復水酸化物ナノシートが10-1S/cmに達する高い酸化物イオン伝導性を示すことを発見した。無機アニオン伝導体の中で「世界最高」の数値であり、固体電解質としてアルカリ燃料電池や水電解装置など応用が期待できる。

 同研究グループは、層状復水酸化物を層1枚にまで剥離して得られる単層ナノシートに注目した。ナノシートは厚さが分子レベルだが、横方向にはその数百倍以上の拡がりを持つ2次元物質であり、大きな表面積を有する。そのためシート面上をイオンが高速で伝導する可能性が期待されていた。

 作製したナノシートをくし形微小電極に堆積させ、シート面内方向に沿ってイオン伝導特性を測定。抵抗値からイオン伝導率を求めたところ、ナノシートのイオン伝導率は温度と相対湿度の増大とともに増加し、80%RHと60℃の環境下でほぼ10-1S/cmに達した。実用化済みの燃料電池に用いられているNafionのプロトン伝導率に匹敵する。

層状復水酸化物板状結晶を最小基本単位である層1枚にまで剥離したナノシートが高い異方性イオン伝導特性を示すという (クリックで拡大) 出典:NIMS
厚さが約0.8mm、横方向のサイズが数μmの単層ナノシートをくし形微小電極上にまばらに堆積。2つの対向するくし歯を連結する橋渡しのナノシートと、単一のくし歯または隙間に位置するものを観察できるが、橋渡しナノシートのみがイオン伝導特性測定に寄与するという (クリックで拡大) 出典:NIMS

 一方で剥離する前の層状複水酸化物板状結晶をくし形電極上に堆積し、その横方向に沿って測定された伝導率はナノシートより1〜3桁小さいことから、剥離してナノシート化したことがイオン輸送特性の向上に大きく寄与していることは明らかである。またナノシートの厚み方向の伝導率は非常に低く、約10-6S/cm程度という。

 同研究グループは「シート横方向のイオン輸送は垂直方向よりはるかに早く、ナノシート独特の究極的2次元構造に起因していると考えられる」とコメントした。

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