次世代石炭火力を2020年代に実現、研究開発が最終フェーズに蓄電・発電機器(1/2 ページ)

高効率かつCO2排出量が少ない次世代火力発電の実用化に向けた開発が進んでいる。NEDOは次世代石炭火力の1つである「先進超々臨界圧火力発電(A-USC:Advanced-USC)」の実用化に向けて、高温蒸気に耐えられるニッケル(Ni)基合金の技術開発に着手した。事業期間は4年間で、その後2020年代にA-USCを採用した火力発電所の稼働を目指す方針だ。

» 2017年06月02日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 従来より高効率かつ環境負荷の低い次世代火力発電システムの実用化が近づきつつある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、次世代石炭火力の1つである「先進超々臨界圧火力発電」の実用化に向けて、高温蒸気に耐えられるニッケル(Ni)基合金の信頼性向上を目的とした技術開発に着手すると発表した。

 石炭火力では「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」が現時点における最高効率の技術として既に実用化されている。このUSCの性能を上回る次世代石炭火力として、最も実用化に近づいているのが先進超々臨界圧火力発電(A-USC:Advanced-USC)だ。

 実用化されているUSCは、粉末状の石炭をボイラーで微粉炭を燃焼させ、その熱を利用して水高温・高圧の水蒸気を作り、蒸気タービンを回転させて発電する仕組みだ。標準システムでは600℃、圧力25MPa(メガパスカル)程度の水蒸気と、2基の蒸気タービンを用いている。

 A-USCはこのUSCの構造をベースとしている。ただ、利用する水蒸気の温度を700℃、圧力は35MPaまで高め、蒸気タービンの数は3基に増やす。これによりUSCでは40%程度の発電効率が46〜48%まで高められる見込みだ。発電効率が上がれば、CO2排出量も少なくなる。

<strong>A-USC(上)とUSC(下)の発電設備の比較 出典:経済産業省</strong>

 A-USCでは現在のUSCより100℃以上高温の水蒸気を利用するため、それに応じた耐久性を持つ機器や材料が必要になる。今回のNEDOのプロジェクトでは、2017〜2020年度の4年間で約6.4億円を投じ、A-USCに適用できるNi基材料の技術開発や耐久性の検証を行う。

 開発するNi基材料の適用先はボイラー熱交換部、配管および蒸気タービンなどを想定している。高温環境下での長期使用を想定した耐久性試験や、高温箇所へNi基材料を適用するため異材溶接部の健全性評価なども実施する。事業の委託先は、東芝、IHI、新日鐵住金、電力中央研究所、電設備技術検査協会、富士電機、三菱日立パワーシステムズだ。

高温材料信頼性向上技術開発の概要 出典:NEDO
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