欧州に続いて北東アジアでも国際間の電力取引が始まっている。冬に需要が増えるモンゴルに向けて中国やロシアが電力を輸出する一方、中国の東北部ではロシアの水力発電所から電力を輸入してCO2削減にも生かす。日本まで国際送電網を広げるためには、制度面の改革が欠かせない。
中国−モンゴル、モンゴル−ロシア、ロシア−中国の間には、それぞれ国際連系線が設けられている(図1)。隣接している国の間であれば、国際連系線を通じた電力の輸出入は技術的に難しくない。欧州のように長距離の海底送電ケーブルを敷設すれば、大陸から海を越えて日本まで電力を送ることも可能になる。
北東アジアの中でモンゴルは、風力発電をはじめ自然エネルギーのポテンシャルが大きい国だが、現在のところ電力の供給力が十分ではない。特に需要が増加する冬のピーク時に電力が不足する。さらに新しい鉱山の開発プロジェクトが南部で進んで大量の電力が必要になった。このため隣接するロシアのシベリア地域と中国の内モンゴル自治区から電力を輸入して不足分を補っている。
近年の経済成長が著しいモンゴルでは電力の需要が旺盛だ。国内の総発電電力量は年々拡大しているものの、それでも足りずに輸入量が急速に増えている。2015年には総発電電力量の4分の1に相当する電力をロシアと中国から輸入した(図2)。電力の需要がピークになる冬の間も輸入量を増やすことで、国内の発電設備を増強せずに対応できている。
とはいえ輸入する電力の価格はモンゴル国内の電力よりも割高で、このまま増え続けると輸入によるコストが重くのしかかってくる。今後は未開拓の風力発電と太陽光発電に取り組み、近隣諸国に向けた電力の輸出を拡大する方向だ。モンゴルでは南部のゴビ砂漠を中心に、風力発電と太陽光発電のポテンシャルの大きい地域が広がっていて、開発する余地は十分にある。(図3)。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)などの評価によれば、モンゴル国内の風力発電と太陽光発電のポテンシャルを合計すると年間に15兆kWh(キロワット時)を超える。これは中国と日本の電力需要を合わせた規模よりも大きい。日本を含めて北東アジアに国際送電網を整備すれば、モンゴルの自然エネルギーで作った電力を各国に供給できるようになる。
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