ガス化プラントの需要が急拡大、バイオマス設備市場は堅調推移か自然エネルギー

富士経済はバイオマス利活用装置・プラントおよび製品の国内市場の調査結果を発表。2020年の市場規模は2016年度比23%増の6009億円と、堅調に推移すると予測している。

» 2017年11月07日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 2017年4月の改正FIT法の施行で、一部の調達価格が見直されたバイオマス発電。調査会社の富士経済が発表した市場調査結果によると、バイオマス利活用装置・プラント、関連製品を合わせた国内市場は、2020年に2016年度比23%増の6009億円と、堅調に推移するとの予測だ。特に食品廃棄物などから取り出したメタンガスを利用する、バイオガス化装置・プラントの需要が同30.9%増の288億円に達すると予想している。

バイオマス利活用の技術・製品市場の推移 出典:富士経済

 この調査はバイオマス利活用装置・プラントなどの9市場、バイオマス由来製品6市場を対象としたもので、それによると、2016年度のバイオマス利活用装置・プラント市場はFIT需要が引き続きけん引し、バイオマス直接燃焼ボイラーの需要を中心に大幅に拡大した。2016年度は後半にFIT価格の改定が発表され、木質バイオマス発電のうち、製材過程で出る端材など一般木質・農作物残さを燃料とする2000kW以上の発電設備で、2017年9月より買取価格の引き下げが決まっていた。それに伴い、駆け込みで新規認定件数が急増した。今後これらの案件が2020年にかけて本格的に稼働することが見込まれるため、バイオマス発電設備としてバイオマスボイラ用蒸気タービンの需要も増加するとみられる。

 間伐材など未利用木質を使用した、FIT買取価格が高い、2000kW未満の需要も増加している。エネルギー効率が良いバイオマスガス化発電が注目されており、近年欧州のバイオマスガス化技術のサプライヤーが商社やプラントメーカーを通じて日本市場に参入する動きも加速している。

ガス化プラントの需要が増加

 調査では、今後の注目市場としてバイオマスガス化・バイオマス利活用装置・プラントを挙げている。バイオマスガス化は、木質バイオマスや稲わらなどの農業残さを乾燥させ、高温で熱分解することでCOやH2などの合成ガスの製造を行う技術であり、発電設備などを含んだバイオマスガス化設備を対象とする。2000kW未満の発電設備での需要が増加しており、バイオマス直接燃焼ボイラではなく、小型高効率なバイオマスガス化技術の導入が進んでいる。電気だけでなく熱も併給できるメリットを生かし、農業用ハウスや、きのこ栽培向け加温などで熱の有効利活用を行う事業者が増加しているという。2016年度は大型案件の受注が増加した影響で、市場は急激に拡大した。

バイオマスガス化関連製品の市場推移 出典:富士経済

 なお、バイオマスガス化の主な需要用途としてはFIT活用による電力事業が中心であるが、今後は地方自治体や木材事業者などによる熱を有効利用するシステムの普及も考えられるとしている。安定した事業例が確認できれば、公共施設や第三セクターなどでの需要拡大が期待されるとした。

 バイオガス化(メタン発酵)およびバイオマス利活用装置・プラント市場も堅調に拡大しそうだ。これは食品残さ、生ごみ、畜産排せつ物、し尿、有機性汚泥などバイオマス資源の有機成分を嫌気条件下でメタン発酵させ、バイオガスを発生させる設備を対象としている。FIT開始以降、食品残さなどの産業廃棄物や畜産廃棄物などを利用した案件が増加しつつある。食品残さでは産業廃棄物処理企業がバイオガス化に取り組む事例がみられる。畜産排せつ物ではこれまでは、消化液を液肥として利用しやすい北海道での需要が中心であったが、近年肉牛や養豚、ブロイラー業が盛んな南九州でもバイオガス化プラントの需要が増加しつつあり、2016年の220億円から、2020年には288億円に増加すると予想している。

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