再エネが企業競争力を高める時代へ、脱炭素化を目指す日本企業の戦略とは?自然エネルギー(1/3 ページ)

企業による再生可能エネルギー導入拡大の動きが、日本でも加速している。再生可能エネルギーへの積極的な取り組みは、企業の競争力を高めることに結びついているという。本稿では、RE100への加盟でも知られる積水ハウスとイオンの取り組みについて紹介する。

» 2018年04月24日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 事業で利用する電力を100%再生可能エネルギーとする目標を掲げる企業が、日本にも増えてきた。再生可能エネルギーの積極的導入は、いまや企業にとって単なるCSR(社会的責任)ではなく、ビジネス競争力を高めることにも直結するという。自然エネルギー財団は2018年3月、企業セミナー「自然エネルギーが企業の競争力を高める」を開催した。六本木ヒルズ(東京都港区)で行われた同セミナーについて、講演企業の最新動向とともにリポートする。

 脱酸素社会の実現に向けて、世界各国の企業が再生可能エネルギーへの取り組みに本腰を入れている。欧米企業に比べて遅れている感の否めない日本企業だが、積極的な取り組みを進めているところも少なくない。セミナーでは、「RE100」への加盟で注目される積水ハウスとイオンが自社の取り組みを紹介した。

積水ハウス、住宅太陽光の電力買取も視野に

 積水ハウスは2017年10月、RE100に加盟した。RE100は事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすること(Renewable Energy 100%)を目指す、世界の主要企業が加盟する国際ネットワークだ。日本企業としてはリコーに次いで2社目、建設業界としては国内初の加盟企業となる(2018年3月末時点でRE100に参加する日本企業は、加盟順に、リコー、積水ハウス、アスクル、大和ハウス、ワタミ、イオンの6社)。

 同社は以前から環境対策を重視しており、2008年には“2050年までにライフサイクルCO2をゼロにする”という「脱炭素宣言」を行っている。実際、2009年には環境配慮住宅「グリーンファースト」を発表し、低炭素と快適な生活を両立する住まいの供給を開始した。2013年からは、その進化型である「グリーンファーストゼロ」を販売し、累積棟数は3万棟に超えている。請負契約におけるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の比率は、現在約74%ということだ。

積水ハウスの環境戦略 出典:積水ハウス

 発表を行った積水ハウス 環境推進部課長の真鍋弘毅氏は、こうした取り組みの背景にある理念について次のように話す。「事業モチベーションになっているのは社会問題を解決するということ。環境問題、エネルギー問題、少子高齢化問題などさまざまな社会問題がありますが、私たちはその中心に住宅があると考えています。良い住宅を供給することは社会問題を解決することだという認識のもと、事業を進めているのです」。

 そして、販売する住宅のZEH化とともに重視しているのが、企業として排出するCO2を減らしていくことだという。具体的には、事業活動で消費する電力のすべてを再生可能エネルギーに転換する。同社ではRE100への加盟に際し、2040年までにそれを実現することを宣言した。中間目標として、2030年までに50%を再生可能エネルギーにすることを目指す。

 再生可能エネルギーの調達にあたっては、自社が供給した住宅の屋根にある太陽光発電設備も取り込んでいく。「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」の買取期間が終了した太陽光発電設備で発電された電力を買い取り、事業用電力として使っていこうという計画だ。太陽光発電設備を搭載したZEHの販売が、将来の電源調達にもつながっていくという、住宅メーカーならではのスキームといえるだろう。

ZEHのイメージ 出典:積水ハウス

 パネルディスカッションに登壇した同社常務執行役員 環境推進部長の石田建一氏は述べている。「多くの日本の経営者は、環境問題=CSRだと思っている。そして、CSRはコストだと考えているのではないでしょうか。しかし、これはCSRでもコストでもなく、競争力を高める事業そのものなのです」。

※当初、石田氏の氏名・肩書に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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