デジタルサイネージジャパンからDS市場のトレンドを探る特集「デジタルサイネージジャパン」(1/3 ページ)

国内最大級の電子看板の見本市「デジタルサイネージジャパン2018」が2018年6月13〜15日、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された。

» 2018年06月18日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

 今展では、屋内外のデジタルサイネージ(DS)やビル壁面に掲出するタイプの大型LEDビジョンといった製品の他、デジタルコンテンツの制作サービス、配信システムなどが多数出展された。

 屋外広告の市場では、アナログからデジタルへ移行する動きがここ数年、筐体のイニシャルコスト・ランニングコストの低下に伴って、都心を中心に増加傾向にある。だが、配信方法やコンテンツの制作ノウハウが、中堅以下の広告代理店にとってはまだ参入障壁となっており、新たな製品やサービスを開発・検討する余地は依然として残っている。

 シンクタンクの矢野経済研究所が公表したレポートによると、DSの市場は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年度には3361億円規模にまで拡大するとしている。五輪は広告出稿のピークであることに加え、大型ビジョンなどのパブリックビューイング(街頭観戦イベント)などを含めた需要を大きく後押しすることが理由だが、大会後には縮小することが予想される。だが、インバウンド増加に伴う多言語案内や観光情報など、五輪後には地方で、導入ニーズは伸長し、需要は落ち込まないと予想されている。

 デジタルサイネージジャパンの展示会場で、今後のDS市場のトレンドを注目を集めたブースから探った。

シャープが提案する次世代8K大型ビジョン

8K対応の大型ディスプレイ

 シャープは、2018年12月に国内で8Kの本放送が開始されることを見込んで、高精細8K対応の大型ディスプレイを主軸に据え、多彩なDSのラインアップを展示した。

 8Kモデルは、70V型インフォメーションディスプレイ「PN-V701」を縦4×横4台の合計16台を組み合せ、8K相当の解像度を実現したマルチディスプレイ。合計で280V相当の縦3.5×横6.1m(メートル)の大画面を活用して、8Kのパブリックビューイング用ビジョンとして提案した。

 他には、防塵(じん)・防水の屋外向け高輝度ディスプレイ(2200cd/m2)やコンテンツ編集・配信管理ソフト「e-Signage S」、制作から配信まで受注するBPOサービスなどが見られた。

 参考出品では、2018年6月下旬に、ひばりが丘PARCOでの実証実験が予定されている「音声対話サイネージ」を紹介。アイレット社が開発したチャットボット(自動会話プログラム)から情報を発信するシステムと連携している。DSの前に立った来場者の問いかけにアニメーションが応答し、道案内やお勧め店舗・イベント情報を案内した。

 実証実験に導入されるタイプは、LINE(ライン)と連携。店舗入り口に設置されたDSに表示されたQRコードをLINEで読み取ると、PARCOのクーポンやスタンプラリーと連動するという仕組み。買い物をすればPOSシステムとのリンクでLINE上に電子レシートも発行される。店側は、LINEを経由した買い物客の動きを把握することができ、入店から購買、その後の行動までのOMO(オンラインとオフライン)含めた一連の動きが可視化され把握することができるという。

左から音声対話サイネージ×LINEチャットボットと、LINE経由の解析データ

旭硝子の強みを生かしたガラス一体型の薄型サイネージ

65インチのinfoverre

 AGC旭硝子は、ガラス一体型のサイネージ「infoverre(インフォベール)」の全ラインアップを出品。

 独自開発の光学接着樹脂と貼り合わせ技術により、ガラスに液晶ディスプレイを隙間なく直接貼り付け、65インチで厚み24mmを実現した。これまでDSの課題だったブラックアウト(黒化現象)も無く、2次反射が少ない上、真の黒を維持できるため、LED輝度のムダを抑えられ、約40%の消費電力につながる。

 屋外用は、ビル地上階のガラス外壁や鉄道プラットフォーム上のホームドア、路上の屋外広告としての用途を見込む。内装用のMirrorシリーズは、色再現性の高いデザインミラーを採用し、電源OFF時にモニターの存在感が目立たず、オフィスの壁やパーテーションへの導入を想定。32、42、55インチタイプにはタッチ操作機能も追加されるという。

 透明タイプのSEE-THROUGHシリーズは、ショーケース用。ガラス奥のスペースに実物の商品を並べ、前面のガラスに映像を流すことで、より訴求力の高い商品ディスプレイとなる。

左から屋外用と透明タイプのSEE-THROUGHシリーズ
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