ブロックチェーンによる「非FIT再エネ」の環境価値取引、環境省が主導自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2018年08月08日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]
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消費者間で再エネ価値取引、ライブデモに成功

 電力シェアリングらによる「C to C取引サプライチェーン検討事業」は、ブロックチェーンやIoT技術を活用して、再エネのCO2削減価値をC2C(消費者間)で取引するためのシステムを構築する。再生可能エネルギー利用量を個人にひも付けて把握し、データ収集するソリューションをブロックチェーン技術と連携させることで、各家庭で創出される再エネによるCO2削減価値を、低コストで容易かつ自由にC2C取引することを可能にするものだという。

「自家消費される再エネCO2削減価値の地方部等におけるCtoC取引サプライチェーン検討事業」イメージ図  出典:電力シェアリング

 同プロジェクトでは、このシステムの実際の運用例として、自宅の屋根で太陽光発電を行っている個人と、所有する電動モビリティなどを再エネ電力で利用したいと志向する個人を結び付け、CO2削減価値の取引を再エネ電力の取引として具体化する仕組みを提案する。7月4日の課題検討協議会では、既に運用実証が開始されている豊島(香川県)の電動バイクステーション(瀬戸内カレン)と、東京の協議会場をインターネットで結び、この取引の様子をライブ中継した。

 具体的には、鳥取県米子市のT宅と、神奈川県川崎市にあるK宅の太陽光発電の自家消費分を1分ごとに計測し、リアルタイムでサーバーに送り、そのCO2削減価値を瀬戸内カレンの電動バイクに充填(じゅうてん)する電力として遠隔移転するというもの。ここでは、ブロックチェーン上で、1kWh(キロワット時)当たりのCO2削減価値を3円で約定・取引してみせた。なお、このデモンストレーションは、同プロジェクト協力企業の一社であるソフトバンクの山口典男氏(ITサービス開発本部CPS事業推進室室長)によって行われた。電力シェアリングの代表取締役社長である酒井直樹氏によると、こうした取り組みをライブ・デモンストレーションで成功させたのは、おそらく世界初だという。

再エネのCO2削減価値を電動バイクに充填するライブ・デモンストレーションの様子
電力シェアリング 代表取締役社長の酒井直樹氏

 酒井氏は、「これまで自家消費される再エネのCO2削減価値取引事業は採算性を十分に確保することが困難だったが、本事業モデルにおいてはブロックチェーンが事業性確保に2つの面で重要な役割を果たす」と述べている。その1つが、商品価値の向上だ。ブロックチェーン技術によって、再エネのCO2削減価値に産地や生産者などの属性を付加することができるので、“顔の見える価値”を直接取引することも可能となる。2つ目は、コスト削減効果。ブロックチェーンを用いれば、取引はほぼ自動化されるので、CO2削減価値を約定・決済するコストを大幅に削減することができるという。

 今後の課題としては、「包括的な取引ルールを策定し、価値取引市場を確立すること」「CO2削減価値の認証に用いる電力量計と計量法の関係を明確にすること」「データの改ざん、セキュリティ対策」などが挙げられた。

 環境省は、これら2つのモデル事業を通して、CO2削減価値が適切に評価される社会への変容を促し、再エネの最大限の活用を後押しする。また、モデルの実用化により、地域の再エネ事業の自立化を加速し、全国各地域の再エネポテンシャルを最大限に引き出すことで、CO2削減量の増大につなげていく考えだ。なお、同事業は原則として3年度以内(2020年度末まで)に大規模実証まで行うこととされており、経過が良好で継続して展開することが望ましいと判断された場合は、最大5年度まで実施される。

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