政府が太陽光発電のコスト目標を見直しへ、入札制度を2MW未満に拡大も法制度・規制(1/2 ページ)

経済産業省・資源エネルギー庁は、「2030年に7円/kWh」という現行の太陽光発電の発電コスト目標を、前倒しで達成する新しい方針を示した。同時にコスト低減に向けて入札制度などのFIT制度の改革も視野に入れる。

» 2018年09月13日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 経済産業省・資源エネルギー庁は2018年9月12日に「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第8回)」を開催し、日本の再生可能エネルギーのコスト低減に向けた今後の対応策などの方向性を示した。太陽光発電についてはこれまで掲げてきた中長期のコスト目標の前倒し達成を目指し、それに向けてFITにおける入札制度の対象範囲を広げるなどの制度変更を実施する方針だ。

 現在の日本のFIT制度では、事業用太陽光発電の中長期的なコスト目標として、2020年に14円/kWh(キロワット時)、2030年に7円/kWhを掲げている。住宅用は2019年に売電価格24円/kWh、その後できるだけ早期に売電価格11円/kWhという目標だ。

 なお、ここでいう発電コストは、FITの買取価格(調達価格)ではなく、資金調達コストのみを念頭に置いた3%の割引率を付加した価格である。実際の調達価格は、発電事業者側の内部収益率(IRR)5%を付加している。2030年の目標発電コスト7円/kWhは、調達価格に換算すると8.5円/kWhに相当する。

現行の太陽光発電の価格目標 出典:資源エネルギー庁

 今回の委員会では、事務局からこの中長期のコスト目標の達成時期を前倒すという提案が行われた。具体的には「2030年発電コスト7円/kWh」という価格目標を3〜5年程度前倒す、つまり、2025〜2027年度に達成するという案である。

 この提案のポイントとなるのが、7円/kWhというコストを、2025〜2027年度に運転を開始する事業用太陽光発電の平均で達成するとしている点だ。

 発電設備はFITの認定を受けてから、発電開始までに最大3年のリードタイムが発生する。この時間を考慮すると、例えば目標コストを2025〜2027年度に達成する場合、その3年前、2022〜2024年度に行うFITの認定において、平均調達価格(FITの買取価格)で8.5円/kWhの実現を目指すことになる。仮に調達価格が8.5円/kWhになったとすると、2017年度の平均調達価格19.6円/kWhの約半分の水準になる。

 なお、住宅太陽光発電については、蓄電池などを組み合わせた自家消費モデルを促進するととともに、FIT制度からの自立化を促す方針に変わりはない。ただし、価格目標については、事業用太陽光発電のコスト低減スピードと歩調を合わせつつ、これまで「できるだけ早期」としていた11円/kWhの調達価格を実現する時期を、事業用太陽光と同じ2025〜2027年度とすべきではないかという提案がなされた。

 事務局はこうしたコスト目標の達成前倒しを行う根拠として、事業用太陽光発電については、世界の市場における急速なコスト低減が進んでいること、複数の調査機関から日本でも現行の目標を下回る水準の見通しが示されていること、さらに国内で既に簡易的なLCOE(均等化発電コスト)試算で、事業用太陽光発電においては10円/kWh未満の発電コストを実現する発電事業者が登場し始めていることなどを挙げている。

事業用太陽光発電のトップランナーの動向 出典:資源エネルギー庁

 なお、風力発電については、現行の「2030年に発電コスト8〜9円/kWh」を目指すという目標は、適切な水準ではないかとしている。ただし、現状集まっているデータや、太陽光に比べて運転開始までに時間がかかることを考慮すると、現在のコスト低減スピードでは目標の実現が難しいことが分かってきた。そのため、コスト低減に向けた取り組みをより深掘りする必要があるのではないかとしている。

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