清水建設が長野でバイオマス発電、虫害材の活用で地域林業にも貢献自然エネルギー

清水建設が長野県東御市で2MW級のバイオマス発電事業を立ち上げると発表。燃料には地域の間伐材や、松くい虫の被害材など、地域内の未利用材を活用する。

» 2018年12月04日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 清水建設は2018年11月、長野県東御市で2MW(メガワット)級のバイオマス発電事業に着手すると発表した。燃料に県内の未利用材や松くい虫の被害を受けた被害材を活用するのが特徴で、総事業費は30億円、プラントの完成は2020年5月を予定している。

 発電所は東御市が所有する羽毛山工業団地(東御市羽毛山)内に建設する。清水建設がバイオマス発電事業の開始にあたって設立した信州ウッドパワーが東御市からこの土地を買い取り、出力1990kW(キロワット)の発電プラントを建設する。発電プラントはボイラー・蒸気タービン方式で、製造は三菱日立パワーシステムズインダストリーが手掛ける。稼働後は一般家庭4500世帯分に相当する年間発電量を見込むという。

発電所の完成イメージ 出典:清水建設

 今回の事業では、敷地内に専用の燃料チップ製造プラントも建設する。信州ウッドパワーの子会社として設立した信州ウッドチップが、県内から調達するカラマツ、アカマツ、スギなどから切削チップを製造する。チップ貯蔵エリアから発電プラントへの燃料チップの投入作業は自動化する計画で、これにより深夜・休日の燃料供給作業を削減するという。なお、チップ製造プラントは富士鋼業が手掛ける。

 長野県は県土の約8割を森林が占め、豊富な木材資源を持つ。一方で、林業の活性化に向けた新たな木材需要の創出や、松くい虫による被害材の処理および資源化といった課題を抱えている。

 今回のバイオマス発電事業における切削チップの利用量は、年間約3万tを想定しており、これは東信地域の森林量を考慮すると、間伐材などの未利用材や松くい虫の被害材で十分に補えるという。燃料源として未利用材や間伐材の買い取り費用は、年間約1〜1億5000万円を見込んでおり、さらに10人程度の新規雇用も創出する。事業を通じて東信地域の活性化や林業振興にもつなげる狙い。

 なお、信州ウッドパワーの資本金は1億円で、現在は清水建設の100%子会社だが、長野県内で森林保全事業などに取り組む長野トヨタ自動車が共同事業者として資本参加する予定だ。

 清水建設では今後、森林資源が豊富な地域を対象に木質バイオマス発電の適地調査を継続実施するとともに、燃料チップの投入作業を自動化した2MW級の木質バイオマス発電所をプレデザイン商品としてパッケージ化し、さらなる事業の立ち上げに取り組むとしている。

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