都教委としても、ハルシネーションの危険性を含むAIのリスクは認識している。そのために大切にしているのが「AI初回授業」と呼ぶ、AIを使う最初の授業だ。初回授業のモデル案では、AIのメリットとともにリスクを解説するよう促している。
初回授業案には、「生成AIから出力された内容のうち、誤りと思われる内容にフォーカスし、なぜ正しい内容とならなかったのか、ハルシネーションが起こりやすい要素について検討する」といったことが書かれている。
初回授業でAIの限界を教えた上で、それ以降の授業の中でも「AIの回答をチェックせずにそのまま出すのは違う、と伝えていきたい」と担当者は話す。「AIは、自分でより良いものを作るために活用する、という前提の指導は必要」
例えば国語の授業で文章の要約に使うケース。AIの要約には、元の文章にないことが書かれたり、大切なところを飛ばしていたりする、といったことも考えられるが、「AIの要約を見ることで、『AIは書かなかったが、要約に大事なポイントはここだ』と批判的に考えたり、思考力・表現力を育成することもできる」とみる。
教員は、生成AIを校務にも活用できる。例えば、「学校だより」などの文書作成の際に、概要を打ち込んで文章を作ってもらうなど、一般的な事務に活用でき、利用シーンは授業以上に多そうだ。
例えば、特別支援学校で、教員が生徒ごとに作成する「個別指導計画」への活用も考えられるという。指導計画のポイントを入力すれば、文章の形にAIがまとめ、その後教員が修正して完成させる、といったイメージだ。
画像読み込み機能を使えば、過去のテストなど紙媒体の資料をデジタル化したり、数学記号をOCRで読み込んでプリントに書き込んだり、といったことも可能。教科ごとに、都の他の教員が作ったプロンプトを共有することもできる。
今回、都立校で生成AIを導入したことで、「都立校を出た児童・生徒は、生成AIのリスクも活用法も知ってる」という状態を目指していく。
「生成AIはこれから社会にどんどん入っていく。適切に活用できるリテラシーを身につけてほしいと思っている」と、担当者は期待している。
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