日本新聞協会は6月4日、生成AIを開発・サービス提供する事業者に対し、報道コンテンツの保護に関するルールを守るよう求める声明を出した。Webを巡回してAIモデルの学習に使う情報を集めるクローラーに対し、アクセスの可否を示すファイル「robots.txt」の順守などを訴えた。
同協会では以前から、生成AIによって記事が無断学習されることを問題視し、法制度の整備などを訴えてきた。2023年11月には、政府に対するパブリックコメントとして、著作権法改正などを求める意見を提出。24年7月には、Web検索機能を活用し、生成AIが回答を出力するサービスに対して著作権侵害の可能性を指摘する声明を出していた。
今回の声明で、同協会は新たにrobots.txtに関する対応を取り上げた。同協会に属する会社の主要なニュースサイトでは、robots.txtにより、コンテンツの保護を示している。一方、robots.txtを無視して情報を収集する業者を一部で確認。販売目的の場合は著作権侵害の可能性もあるなどと指摘し、AI事業者に対してrobots.txtの順守を求めた。
加えて「生成AI向けのクローラーと、検索サービス向けのクローラーが分けられておらず、報道コンテンツの権利者が適切に意思表示できない」などの問題もあると説明。生成AI向けのクローラーだけをブロックするなど技術的な解決が必要と主張した。また政府に対しても、現状のAI学習と著作権に関する制度整備では、報道コンテンツを保護するのに「極めて心もとない」と指摘した。
「このままでは、コンテンツ再生産のサイクルが損なわれ、報道機関は取材体制の縮小を進めざるを得なくなる可能性がある。生成AIが報道機関に代わり取材・報道を担うことは決してない。ニュース発信の重要な担い手である報道機関の機能が低下すれば、国民の『知る権利』を阻害しかねない。民主主義の在り方などにも関わる極めて重要な問題であり、著作権法や競争法といった従来の枠組みにとどまらない総合的な対応も求められる」(同協会)
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