交わした契約忘れたいよ 目を閉じ確かめる 押し寄せた引き落とし 無視して見ないよ いつになったらなくした貯金を 通帳でまた見ることできるの? 溢れ出した督促の紙を 何度でも破って役所に謝りにいこう
SNSや動画投稿サイトにおいて、生成AIの情報があふれています。情報を拡散させるのは、生成AIインフルエンサーと呼ばれる人たちです。そんな存在に憧れた人は、どうなるのでしょうか。今回は、もしかしたらあり得るかもしれないトラブル事例を現代AI童話(ぐうわ)「AIスクール・まじか☆サギカ」として紹介します。
都内の企業で働く隣真希(となり まき・仮名)さんは、仕事や将来について不安を感じていました。物価は上がっても収入は上がりません。転職するにも年齢的に経験や能力が求められて、毎日が同じ仕事の繰り返しで諦めもありました。
そんな中で「企業は利益が出ても生成AIでリストラ」というニュースを見ると、次は自分の仕事がAIに奪われてるのではと不安になります。心の支えは推し活ですが、家賃や生活費が高い東京では生活に余裕がありません。将来における収入や仕事に対する不安をなくして、副業やスキルアップや会社に頼らない生き方がしたいと考えていました。
通勤電車でSNSを見ていると、生成AIスクールの広告を目にしました。受講生が副業で月に数十万円稼いでおり、スクール主催者はGAFA出身のSNS総フォロワー数20万人を誇り、ビジネス系メディアで有名人と対談して、テレビCMも放送されていました。気になったものの、疲れていたのでいったんは見過ごしました。しかし毎日似た広告が表示されて気になり、無料セミナーに申し込みます。
オンラインで介されるセミナーでは、スクールの主催者が生成AIにおける現状を解説します。「AIは人間よりはるかに賢い」「ホワイトカラーの9割は失業」という、恐ろしい内容です。
セミナーには累計30万人が参加して、スクールの会員数が3万人、月収100万円以上の会員が50%を占めて、教材はAIスタートアップの技術責任者や研究者など100人が1000本の研修教材を制作し、500人の社内スタッフによるサポートを受けられるといいます。セミナーは3時間ほどで、何度も「生成AIスキルを身につければ、お金と仕事には困りません」と主催者が繰り返していましたが、中には受講者の質問に対して違和感のある回答もありました。
最後にスクールの入会案内で、月額2万円の支払いと初回50万円の一括支払いによる永続利用が選べます。主催者はスクールの生徒が増え続けてサポートが難しくなるものの、本日一括支払いで入会すれば、優先サポート対象になると案内します。
続けて著名人やインフルエンサーが集まるオフ会や合宿を開催しており、永続利用者は参加費が無料と強調。さらに「生成AIを習得すれば生涯年収で3億円の差がありますが、そのスキルがたった50万円で手に入ります! 一括支払いなら生成AIの最新情報を常に学べて、月額支払いを2年間続けるよりお得です! 2年たたずに副業や転職で元が取れます!」と、メリットを強調します。
気が付くと真希さんはクレジットカードの番号を入力していました。50万円はカードの利用限度額や預金残高が懸念でしたが、後日カード会社と親に連絡してなんとか支払いました。
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