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「国産四足歩行ロボ」でクマを追い払う 東大発スタートアップのねらい イメージは「エヴァ」?(2/2 ページ)

» 2026年03月06日 12時00分 公開
[島田拓ITmedia]
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KUMAKARA MAMORUの現状 東北大や仙台市との連携も

 KUMAKARA MAMORUで想定する運用ケースとしては、クマの出没を確認後、自動車でHLQ Proを現場付近まで運ぶ。自律歩行と遠隔操作を組み合わせてHLQ Proをクマに接近させ、搭載したスピーカーなどで追い払う。また、クマがHLQ Proに興味を示した際には、おとりとしての活用も考えている。

 「人が避難する際に、何台かのHLQ Proがひょこひょこと動き回り、避難場所とは逆方向にクマを誘い込みます。今までの技術(車やドローン)では難しかったことで、ロボットならではの活用法だと思います」(増岡代表)

歩く様子
しゃがむ様子

 一方、最悪の場合、クマがHLQ Proを破壊する可能性もあるという。追い払う際も、クマがHLQ Proにおびえなかったり、慣れたりする可能性も否めない。技術面でも、クマと人の遭遇が想定される山間部では通信環境が整っておらず、HLQ Proの遠隔操作などに支障を来す恐れがある。

 26年2月の取材時点では、クマの冬眠期間を生かし、クマと人の遭遇が想定される場所で、オペレーションなどを検証している。東北大学や宮城県仙台市との連携も決まっており、今後1年間で実用での課題や解決策などを探る。遠隔操作に関しては、通信会社との協力も視野に入れる。

 なお、HLQ Proの稼働時間については「クマ対策では実用に耐えうる」(増岡代表)と説明した。

イメージは「エヴァ」? 今後の展望

 KUMAKARA MAMORUのきっかけは、25年にHighlandersに寄せられたクマ対策の依頼だ。山を所有している企業や、クマ被害に遭った患者を持つ病院などから「ロボットでクマを追い払ってほしい」といった要望が数十件あったという。

 Highlandersは、東京大学発のスタートアップで23年に設立された。「労働をロボットで一掃する」というビジョンを掲げ、人型ロボットや四足歩行ロボットの研究開発をしている。

 特に注力しているのは、建設現場など物理的な危険が伴う労働環境でのロボットの活用だ。国産にこだわるのも、危険なのに現在まで残っているのは“不可欠な仕事”という考えのもと、継続性や安全性を高めるためという。こうした取り組みの一環として、クマ対策に乗り出した。

 「昨今の人型ロボットは、ダンスなどのエンタメで活躍していますが、それだけでは寂しいと思います。踊るだけなら、画面の中のアニメや3Dモデルにもできる。(物理的な)体を持つロボットの本当の社会貢献を考えていた際、クマ対策の相談を受けました。ロボットが、社会にとってなくてはならない存在に進化する機会だと捉え、KUMAKARA MAMORUを始めました」(増岡代表)

 一方、増岡代表によれば、KUMAKARA MAMORUはビジネスではなく、あくまでボランティアの位置付けという。他社から協力の申し出もあるため、将来的には規模を拡大する可能性もある。しかし現時点では、ロボットの社会実装に向け、実用例や有用性を示すことを優先する。

 「実際にクマと戦っている方々は命懸けですから、足手まといのロボットを有償で貸し出すのは良くないと考えています。現場で役に立つことが明らかになってから、展開していきたいです」(増岡代表)

 増岡代表は、KUMAKARA MAMORUの今後の展望について、アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズを例に挙げ、以下のように語った。

 「『クマが出るかもしれない不安な街』というイメージを塗り替えたいと思っています。エヴァンゲリオンを想像してください。使徒(敵キャラクター)がやってくるかもしれない怖い街ではなく、エヴァが守ってくれる街。弊社のロボットに限らず、『最先端の技術が安全を守ってくれる街』というポジティブなイメージです」(増岡代表)

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