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コラム
» 2006年08月08日 08時50分 公開

金融・経済コラム:AmazonやGoogleが証券会社を買収したら……?

インターネット証券のおかげで株式投資はネットを通じて、というのが一般化した。しかし、いまのネット証券のサービスは古いやり方をそのままネットに載せただけに過ぎない。もしもAmazonやGoogleが証券業に乗り出したら“Web2.0的”株取引サービスが出現するかも……。

[保田隆明,ITmedia]

 最近は、インターネット業界以外の人たちの間でも「Web2.0」という言葉が使われることが増えてきました。また、2.0ブームにあやかり、他の業界でもやたらと「Web2.0時代の○○業」という表現が使われたりしています。

 そんな中、先日、ある証券会社の人とWeb2.0について話をしていました。インターネット証券の台頭により株式投資はネットでやるもの、という感覚がすっかり身につきました。しかし、Web2.0的要素が盛り込まれたインターネット証券会社というのは存在せず、基本的に今までは電話や店頭で行っていた情報収集と売買注文がネットでできるようになっただけです。つまり、電話や店頭訪問という行動様式の代替としてネット口座の取引というものが登場しただけの段階です。

 その帰り道にふと思ったのですが、もしAmazonが証券会社を買収するなり、あるいはイチから証券会社を立ち上げるとどうなるのでしょう。

 例えば、ある日、Amazon証券でトヨタ自動車の株を購入したとします。すると

 「トヨタ株を購入した人はこんな株式も購入しています」

 という表示とともに銘柄リストが登場しちゃったりするのでしょうか。それをもとに株式売買をする人たちが出てきたりするかもしれません。

 これは、単にAmazonのレコメンデーション機能がネット証券に導入したイメージですが、もう少し進化させるとこんなことも可能かもしれません。それは、例えばトヨタ株を購入して1ヵ月後、Amazon証券の画面にこんなメッセージが表示されます。

 「あなたがトヨタ株を買った同じ日にトヨタ株を購入した人のうち、50%の人はすでに売却しました」

 このメッセージを見た人は、自分もそろそろ売っておこうかなと思うかもしれません。このような機能が可能であれば、同じ日に同じ銘柄を購入した人たちのある一定量(例えば10%とか30%とか)を事前に定めておき、その量の人たちが売却した時点でお知らせメールが来るなんてことも可能かもしれません。

 株式投資は美人コンテストですから、みんなが買うものは値段も上がりますし、みんなが売るものは値段も下がります。したがって、ほかの人たちの行動パターンを予想することは株式投資の大きな要素になります。Amazonが証券ビジネスを始めて投資家の行動パターンを完全に把握できるようになると、株式投資の世界はガラリと姿を変えるかもしれません。

 Googleが証券ビジネスを始めたらどうなるだろう、とも考えてみました。

 株価は時事ネタ、社会現象、マクロ経済の影響を受けます。例えば猛暑で上がる株価もありますし、皇室で出産があると育児関連企業の株価が上がったりします。マクロ的なところでは原油高の時に株価が上がる企業と下がる企業などがあります。それらは、そういう現象が起きたときには新聞などのメディアで報道されていますが、誰かがこれらの情報をストックしておき、容易に検索可能な形にしておいてくれると、あとで非常に助かります。例えば、なんらかの理由で誰かが来年猛暑になるなと予想したとして、しかし、猛暑でどんな企業の株価が影響を受けるかまで分からないと、せっかく猛暑を予想できたとしても株式投資には役立ちません。そんな時に、「猛暑」という言葉で検索をかけると関連銘柄一覧が表示され、過去の猛暑のときとそれらの企業の株価変動率みたいなものが表示されると非常に便利でしょう。

 検索でなくとも、タグづけでも面白いと思います。企業を調べることに関しては、どの業界の企業かぐらいはすぐに分かりますが、具体的にどんなサービスを行っていてどんな商品を持っているのかなどの情報は、各自が一生懸命四季報や各企業のウェブサイトなどで調べる必要性があります。しかし、例えば誰かが企業ごとにタグ付けをしてくれると、そのタグからいろんな企業を見つけ出すことができます。

 タグ付けが可能になると、企業の事業内容という定性的なものだけではなく、成長率XX%以上とかの数値面でもソートしやすくなるでしょうし、タグ付けと同じ感覚で、投資家が各企業の予想株価を簡単に書き込めたりできちゃうかもしれません。

 分かりやすい例としてAmazonやGoogleで考えてみましたが、証券業界、金融業界ではまだまだ視点が提供者サイドですので、なかなかWeb2.0的要素は付加されていきませんが、既存のインターネット企業がこのような形で金融業界に切り込んでいってくれたりすると面白いな、と勝手に想像していました。

保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


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