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Javaの父、GoogleのAndroid戦略に「苦言」?

» 2009年06月24日 07時55分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Googleマニアの中には、今後新しいAndroidスマートフォンの登場に伴い、Android対応アプリケーションも豊富に出そろうものと期待している向きもいるだろう。だが、このオープンソースOSをめぐるGoogleの方針に誰もが納得しているわけではない。

 AndroidはオープンソースのJavaプログラミング言語を利用しているが、Javaのそもそもの開発元であるSun Microsystemsには、当然のことながら、Javaを守りたいという気持ちが強い。Googleが2007年11月、携帯端末向けのAndroid OSとそれに付随する開発ツールを発表すると、Sun幹部は「AndroidはJavaを分断化させることになる」との懸念を直ちに表明、GoogleのAndroidチームを強く非難した。

 「Javaプログラマーは通常Javaの互換性テストを受けるが、それも行なわずにプログラマーが手当たり次第にAndroid携帯向けのJavaアプリケーションを開発できるようにすれば、深刻な互換性の問題に発展するだろう」というのがSunの主張だ。

 例えば、AndroidはJava言語を使用しているが、小型端末向けのJava仕様であるJava Micro Edition(Java ME)とAPIがすべて同じというわけではなく、通常のJVM(Java仮想マシン)では実行できない。こうした状態はJavaベースのスマートフォン向けのアプリケーションの分断化を招く、とSunは主張している。

 Sunはこれまでにも、自社のソフトウェアポートフォリオのベースとなる要の技術を守るべく(Javaがまだオープンソース化されていなかった時代)、MicrosoftやIBMなどの競合企業に対し、同じような批判を行っていた。

 eWEEKシニアエディターのダリル・タフトは先ごろ、Javaの生みの親であるジェームズ・ゴスリング氏に取材を行なったが、その際、「GoogleがJavaを使用していること、あるいはGoogleが使用しているJavaのサブセットについてどう思うか?」との質問にゴスリング氏は次のように答えた。

 おかしな話だ。ほかの子供たちと一緒に遊びたがらない怒りっぽい子という感じではない。それよりも、まるで世事に超然として、『つまり、ほかにも仲間がいるのだから一緒に遊べばってこと?』とでも言っているかのようだ。GoogleがAndroidで何を目指しているのかはよく分からない。とにかく、GoogleはAndroidを提供し、多くの人たちがそれに反応している。大きな魅力は価格がゼロという点だろう。だがわたしがこれまでに話を聞いた限りでは、Android携帯に乗っかろうと、大勢の人たちがこの取り組みに加わり、プログラムの開発を進めている。そうなると、今後登場するAndroid携帯は互換性を備えないことになるだろう。

 「ほかの子供たちと一緒に遊びたがらない怒りっぽい子」というのは、かつてのMicrosoftやIBMのことを言っているのかもしれない。だがGoogleが「世事に超然として」という指摘については、わたしには、ゴスリング氏が本気でGoogleのAndroidチームがそうした甘い認識で動いていると考えているとは思えない。

 これは、Googleに丁重に苦言を呈するためのゴスリング氏なりのやり方なのでは? 同氏はAndroidチームに対し、「ほら、市場にはほかにもJavaスマートフォンがあるのだから、そろそろそれらしく振舞えば? 仲良くしたらどう?」とでも言いたいのではないだろうか。

 あるいは、ことによるとゴスリング氏は本当に、GoogleがかつてSunをひどく悩ませたMicrosoftなどの競合企業と同じように振舞っていると考えているのかもしれない。つまり、「Javaプログラミングに関してほかの会社がどうしようが関係ない、これがGoogleのやり方だ」という態度だ。

 調査会社Enderle Groupのロブ・エンダール氏によると、Sunとの関係という点では、Googleはオープンソース寄りである分、プロプライエタリな企業であるMicrosoftと比べて、Sunとはより良い関係にあるという。同氏はGoogleについて、わたしに次のように語った。

 Googleは徹底したアンチMicrosoftだ。つまり、GoogleはMicrosoftが行なっていることの多くを避けようとするはずだ。例えば、一貫したコードベースを維持するといったことだ。Googleのアプローチに問題があるとすれば、互換性についてだ。互換性は、プラットフォームの変更はほとんど認めないというMicrosoftの方針の核となっている要素だ。確かに現状では互換性の問題が懸念されるが、Googleがこの問題にきちんと対処できるかどうかを判断するのは時期尚早だ。今後の動きを見守る必要があるだろう。ゴスリング氏が指摘しているリスクは確かに現実的だ。だが、そうしたリスクを緩和する有効な方法もある。いずれにせよ、Googleの方針の成否を判断するのは、市場にもっと端末が出回ってからだ。

 皆さんはどうお考えだろう? これはただの空騒ぎにすぎないのだろうか? 皆さんのご意見をぜひお聞かせ願いたい。

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