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iPhone OS 3.0でアプリはどう変わるか? 7つの予想(2/2 ページ)

» 2009年06月25日 17時03分 公開
[松尾公也,ITmedia]
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AR(拡張現実)が現実に

 「セカイカメラ」「ARToolKit」「電脳フィギュア ARis」、これらはいずれもカメラで見えている画像に、デバイス上で作り出すイメージや情報をオーバーレイするものだ。広義のAR(拡張現実)に分類できる。iPhoneでこういった技術を実装する場合、これまでデベロッパーに対して制限が課せられていたが、iPhone OS 3.0で一部開放される可能性がある。

 そうすれば、これらの技術を使ったアプリが登場してくるはずだ。あなたが見ている風景で歌って踊る初音ミク、というのも現実になるのだ(Windows Mobileでは既にARToolKitを使ったこのアプリは存在する)。iPhone 3GSに実装された電子コンパス機能を組み合わせれば、さらに魅力的なAR端末となるだろう。

 ただし、現時点ではカメラ系アプリのかなりの数がAPI制限の変更によってApp Storeの審査にひっかかっているという情報もあり、iPhoneが一気にARデバイスの標準となるかどうかは不透明だ。場合によっては制限が少なくコンパス機能を持つ、NTTドコモのAndroid端末「HT-03A」が先行するかもしれない。

iTunes連動は前提に

 iPhoneで忘れられがちなのが、iTunesとの連動だ。iPhoneは、事実上の標準であるiTunesの音楽ライブラリをそのまま入れて持ち運べる「iPod携帯」なのだが、サードパーティーのアプリでは、その音楽を使うことができなかった。一部のアプリにiPodを流しっぱなしにして、同時に楽器を演奏したり、BGMにすることができるというものがあったが、アプリの中から曲を呼び出したりはできなかった。曲を終了することすらできなかったのだ。

 iPhone OS 3.0からは、アプリからプレイリストの表示、楽曲の再生、ジャケット表示などが可能になり、「独自のiPodユーザーインタフェース」を作って販売することができる。曲のタイトルのキーワードなどをタグクラウドにして表示したもの、ジャケットを3D表示させて楽曲を選べるようにしたもの、ポケットの中に入れたiPhoneの曲再生を手探りだけでできるようにするもの、といった「一芸に秀でた」iPodアプリが既に登場している。

 さらに、これからは「Pandora」などのネットラジオがiPodライブラリを活用して、AppleがiTunesで提供しているGeniusサービスみたいなものを組み込んでくるのではないだろうか。手持ちの楽曲で気に入ったのがあれば、それに似た楽曲を選び出してストリーミング再生してくれて、気に入ったらiTunes Storeで購入し、デベロッパーはアフィリエイト収入を得るという仕組みができそうだ。

 iPodライブラリから選んだ楽曲にボーカルキャンセリングを施し、そこに歌詞を取得してオーバーレイさせるお手軽カラオケアプリも登場するだろう。

 楽器アプリのデベロッパーはこの機能への対応が必須となるだろう。iPod楽曲ライブラリにアクセスして、一緒に演奏できる、というのがデフォルトになるのではないだろうか。「Amazing Slow Downer」のように、楽曲のテンポを落として一緒に演奏できるような楽器アプリが登場するのも時間の問題だろう。

 ストリーミングラジオの音楽をダブ化するアプリが出て話題になったばかりだが、次のバージョンではiPodライブラリを使えるようになるだろうし、DJ系アプリはiPodライブラリの使用は当初から望んでいたことだ。それができないから、アプリ内に楽曲ファイルを転送するといったことをしなくてすむのである。iPhone最強の資産である「iPodライブラリ」を自由に使えるという意味で、ほかの携帯プラットフォームは太刀打ちできないのだ。

キーボードが使えるようになる

 これまで、iPhoneのDock(従来のiPodと同じ形状)は、充電と音楽再生以外の目的では使えなかった。それが、iPhone OS 3.0からは開放される。既にいくつものプロジェクトが走っているに違いないが、複数の企業が考えていると推測されるのが、キーボード。iPhoneのドックに直接、もしくはBluetoothで接続されるキーボードだ。

 テキスト入力専用デバイスとして、キングジムの「ポメラ」が大人気だが、リュウドなどから出ている携帯電話用のBluetooth、USBキーボードがiPhoneで使えればかなりの人気になるだろう。そうすれば長文の入力も苦にならなくなる。iPhone OS 3.0ではカット・コピー&ペースト機能もついたので、「iPhoneをワープロ代わりに」というのも、夢ではない。使いやすいキーボードとそれに最適化されたエディタアプリがあれば、けっこう高額なものでも売れるのではないだろうか。

 キーボードはテキスト入力に限らない。音楽用キーボードも登場が望まれている。シンセサイザー、ギター、ピアノ、メロトロン、ボコーダーなどのさまざまな楽器アプリがiPhone用に登場しているが、キーボード系の楽器として使うには画面が小さすぎる。ソフトウェアシンセサイザーやサンプラーとしての優秀さは証明されているので、あとは外付けキーボード(MIDIキーボードのようなもの)を付けられれば、それだけで弾き語りができる。

 コルグの超小型MIDIキーボード「nanoKEY」あたりがDockコネクター経由でiPhoneに接続できれば面白いことになりそうだ。

 WWDCの基調講演では、血圧計をはじめとする医療系センサーがDock開放の事例として使われていたが、ゲームコントローラなど、エンターテインメント向け周辺機器も登場するだろうし、それと連動したアプリケーションも登場してくるのではないだろうか。

 iPhone 3GSは米国でリリースされ、すぐに100万台に到達。日本でも26日から販売が始まる。デベロッパーはしばらくは既存アプリの3.0対応に追われるだろうが、すでに3.0でなければできないアプリや周辺機器のリリースが追って始まるだろう。

 ――と7つの予想をたててみた。おおまかな流れは外していないつもりだが、AR用のAPI開放とか、キーボード接続の認可とか、Appleの判断基準が読めないものもある。それでも、今回のiPhone OS 3.0はデベロッパーにとって最大規模の「開放」であり、歓迎もされている。これまでみたこともない画期的なアプリやハードが登場するのは間違いない。その画期的なアプリやハードを古いiPhone 3Gで使うか、新しく高速なiPhone 3GSで試すかが、26日以降の新たな悩みとなるかもしれない。

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