Whatを見つけて、今いる会社でオンリーワンの自分になる自分らしいキャリアを築くために(3/3 ページ)

» 2006年12月18日 00時05分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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現職レベルのWhatを見つけて、会社の希望にも応えられた例

 ある版権を売っている会社で働いているAさんの例です。Aさんは、住宅展示場で、あるキャラクターを飾り付けるプロジェクトをやりたいと希望しています。

 ところが上司は、そのプロジェクトはお金にならないからダメだ、といいます。実は、相談に来たのは、この上司の方で、Aさんはこの人の部下です。部下は住宅展示場をやりたい。しかし上司は、それはやってもお金にならないし、11月の決算までに、どうしてもこれだけの売り上げを上げないと、ウチの部署の存続が危ぶまれる、と反対しました。すると、部下のやる気がなくなってしまった、という話をされたんです。

 そこで、まず、上司の方に、「住宅展示場のプロジェクトをどうしてやりたいか、それの何が楽しいのかを徹底的に聞いてください」とお願いしました。すると、Aさんの「住宅展示場をこんな風にしたい!」という気持ちが膨れ上がります。さて、この後に、「だけどさ、それがいいのはわかるけど、11月の決算を考えろよ」と言ってはいけません。Aさんの気持ちをつぶしてしまうことになるので、上司からそれを言い出してはいけません。

 「なるほど、住宅展示場をやりたいと。ところで、会社はどんな状況で、何を求めていると思う?」と部下のAさんに聞きます。するとAさんは「11月の決算まで、これだけ上げないと、ウチの部署が潰されるのは分かる」と答えました。そこで「ほらみろ」ではダメですよ。こういうと、「もう、この上司に言ってもダメだ」となってしまいます。部下がやりたいといったことを、絶対否定してはいけません。否定した瞬間、やる気がしゅるしゅるーと小さくなってしまいます。でも膨らますばかりでは、お金にならないことばっかりなので、会社がつぶれちゃいますね。なので、Aさん本人に聞いて、言わせることが大事です。

 そしてここで「君の住宅展示場のプロジェクトもやりたいし、11月の決算までの売り上げも出したい。どうしたら両方が満たせるだろうか」というように、真摯に部下に接してほしいのです。すると、部下は「そんな方法、ないですよ」とは言えなくなります。もし「ない」と言われても、「もしあったとしたら、どうだろう?」と聞きます。誠心誠意、「君の希望も満たしたいし、会社が今、求めているものも満たしたい。その両方が満たされる方法があるに違いない」という姿勢で話すのです。そうすると、部下は、いつかは考えてくれるのです。

 この場合は、Aさんが、「11月の決算までは、一番収入になる仕事を徹夜してでもやります。その代わり、決算に目標数値が達成できたら、比較的暇なそのあとの2、3カ月は住宅展示場のプロジェクトをやらせてください」ということで、解決しました。会社としては、そんな勢いでできるんだったら、ほかの月も同じペースでやってくれ、といいたくなるんですが、違います。あとで好きなことができると分かっているから、そんなに好きじゃないものもがんばれるのです。

 こんな風にすると、本人はやりたいことができるし、会社の売り上げも上がります。社員は、会社の給料が自分の労働から出ていると、ちゃんと分かっています。「金にならないものばかりやるけれど、金だけくれ」なんて、さすがに言えません。でも、上司が「金にならないことばっかり言って、どこから給料もらってると思ってるんだ」と言ってはダメなのです。このことは、本人の口から言わせて、希望は否定しない。そして「どうしたら両方、満たせるだろう」と聞いていく。部下のWhatと会社のWhatを見つけたら、ここを糸口にして話し合いができるのです。


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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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