緊急時に確実に病院に受け入れてもらう方法はありますか?現役医師がズバリ回答

春です! なんだか妙にやる気が出てきた筆者ですが、質問はまじめでした。「夜中の急な発熱や激痛。直接病院に電話をしても診療を断られてしまいました」とのこと。確実に病院に受け入れてもらう方法があるのでしょうか。

» 2009年03月25日 15時27分 公開
[仁科桜子(企画:ソフトバンククリエイティブ),ITmedia]

 春ですね。春になると、なんだか妙にやる気が出てきたり、新たなことにチャレンジしたくなるような変なホルモンが出てくるのは私だけでしょうか? 冬眠から覚めたクマのような気分。あー、私も何か始めないと!

 そんなスプリング・ホルモン(そんなのないけど)の影響か、年甲斐もなく「カラージーンズ」が欲しくなりました。春流行のパステルカラーなんかのジーンズですね。若い子に人気なのはピンクやオレンジ、グリーンらしいです。

 そこで若いお姉ちゃんたちに紛れて、私は(顔をやや隠しつつ)大胆にも淡いパステルピンクを試着。……鏡には、ゆでた大根というべきか、いや、なんかピンクのモモ引きみたいな、非常におかしなオバサンが映っておりました。

 きっと世の中には、藤原紀香さんの輝かしい姿に惑わされて(ユニクロCMでピンクのカラージーンズを着用なさっているんですよ)、つい自分もイケるんではないかと血迷ってしまう女性がたくさんいるのではないでしょうか。紀香さんと同じものを着ても、紀香さんになれるわけはないのにね〜。

 というわけで、その中の1人がめでたく私です。もちろん、血迷って試着したピンクのジーンズはお返しし、仕方ないので隣のアイスクリーム屋でやけ食いしてから家路に着きました。こんなことしてるから、産地直送ってな感じで大根はさらなる成長を遂げてしまうんでしょう。

質問

 夜中の急な発熱や激痛。直接病院に電話をしても診療を断られてしまいました。なぜ断られてしまうのでしょうか? 本当に必要な時、確実に診てもらうアプローチ法はありますか? 病院はまだしも、救急車にも断られてしまいやしないか不安です。


 さて、本題に移りましょう。今回もご質問をいただき、ありがとうございます。いやー、それにしても、救急医療にまつわる人々の不安というものは近年、どんどん大きくなっているように感じます。一連の報道の影響もあるでしょうが、やはり日本の救急医療体制が制度疲労を起こしつつあるのは事実なのでしょうね。それは現場で診療していても実感します。

 しかし、医者の立場として病院の中から見る景色と、患者側から見る景色は大きく異なるということに気付きました。そんなことも含め、救急医療について考えてみようと思います。

 さて、ご質問の内容ですが、大きく分けて「本当に必要な時、確実に診てもらうアプローチ法はありますか?」と「病院はまだしも、救急車にも断られてしまいやしないか不安です」の2つの質問のようです。まずは前者について考えて見たいと思います。

 パリス・ヒルトン日本版みたいなVIPが存在するならば、その人たちは電話1本で確実に診療してもらえる裏ルートを持っているのかもしれないけど、一般庶民はそうはいきません。

 長年患っている持病なんかだと、どんなに患者さんがいっぱいでも、かかりつけ病院がなんとか無理して診療に応じることもあります。しかし、入院のベッドが空いていないとなると、これはいくらかかりつけ患者でも物理的に無理。まさか、誰か一人追い出すわけにもいきませんし。そんなときは、ひとまず外来でできる範囲で診療や応急処置をし、その後、ベッドの空いているどこか別の病院に搬送するなんてこともあります。

 だけど、「かかりつけ患者以外は診れません」というところもあるし、また実際に医者の数が足りていなかったりすれば断らざるを得ない状況もあります。実際、私も救急車を断って消防庁からムッとされた経験がありますが、その時当直は自分1人だけで、もともとICU(集中治療室)に入っていた患者さんの容態悪化と、すでに数分前に運ばれてきた重症の患者さんが重なって手一杯だったんです。

 それを放ったらかして次の人を受け入れるわけにもいかず、かといってほかに医者の手もない。これが現実です。「じゃあとりあえず、私だけでも今すぐ診てよ」と言う人も多いのですが、その要望を全部受け入れたら、すぐに病院はパンクしちゃいます。

 ですから、この質問に対する明確な答えは私はできませんが、少なくとも防衛策として、緊急の時にどこの病院に電話するか、いくつかリストアップしておくことが大切です。家の電話の横(あるいはケータイのデータでもいいかも)にも、救急の時にかかる病院を順番にメモして貼ってあります。上から順にかけていって、断られたら次、ってな感じで。特に、妊婦さんとか、小さいお子さんがいる家庭なんかは、ある程度こういう状況が想定できるわけですから、事前の準備が大切ですね。

 とはいっても、最近の日本では、どんなに準備していても、いざという時にたらい回しにされてしまうという事例が少なくありません。悲しい現実ですが、これを100%回避するのは今の時代、難しいんですね。今後、少しずつ国が対策をしていってくれることに期待するしかないけど(麻生さんに期待してよろしいでしょうか)、まず第一歩として、「救急車を適正に利用する」といったような、個々でできる小さな心がけや努力が大切としか言えないのが現実なんですよね……。

 ちなみにこの「救急車を適正に利用する」問題は次の質問にも重なる回答になりますので、次回で詳しく説明したいと思います。

本日の処方せん

  • 緊急時にどこの病院に電話するか、いくつかリストアップしておくこと

仁科桜子(ドクトル・ピノコ)プロフィール

 女医。医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペーンガールや大手塾講師など数々のバイトをこなす日々を過ごす。現在は、酒と体力だけには自信アリの外科系ドクターとして病院勤務。

ドクトル・ピノコ名義で「週刊ビジスタニュース」などにコラムを執筆している。2009年1月、仁科桜子(にしな・さくらこ)名義で『病院はもうご臨終です』(ソフトバンク新書)を発売した。


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