生活者の選択は「自利利他」、企業のCSRはCtoBに達人のクリエイティブ・チョイス(2/2 ページ)

» 2009年05月29日 21時30分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]
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そんなことするなら本業で還元して――CSRはオープンソース型に

 実はこうした身近な取り組みと対極にあるのが、企業のCSR活動だったりする。「確かに『この会社がコレやる意味が分からない』という、違和感のある活動もありますね」(堀内さん)。

 吉川さんも「生活者も分かっています。企業のCSRも生活者のやっている活動を支援する方向が考えられます」という。これまでのように必ずしも会社が主体にならずとも、草の根の運動を会社のリソース(人や資金)を使って支援して、「(会社のリソースを投入すれば)従来のNPOの動きをさらに大きくできると思います」

 本業と異なるところでCSRをやっていても生活者の共感は得られない。生活者の動きを企業が増幅するのがこれからのやり方――というわけだ。BtoCならぬ、CtoBだというのである。

 「生活者の余力を集積するのが大事。みんな仕事でいっぱいいっぱいだから。消費側だった生活者が供給側として暫定的に参加するのはOKだけど、供給専従はだめ。専従することになると責任と利益を考え出して、それに縛られてしまう」(吉川さん)。さまざまな協力者と一緒に作り上げる様はまさにオープンソースと言えそうだ。

 ただ、企業側が生活者側といつでもタッグを組めるかというとそうでもない。「(『企業対自分たち』みたいな構図もまだなくなったわけじゃないですよね」(吉川さん)。もちろんNPOとしてはスポンサーとして企業にお金を出してほしい反面、出されたら言うことを聞かなきゃいけないという懸念もあるのだろう。生活者としてどういう選択をするべきか、企業としてどういう関わり方をしたらいいかが問題になりそうだ――。

 堀内さんは「適正な自己中心性」がキーワードという。「これは、チャールズ・ハンディという経営学者が10年以上前の著作で使った言葉。今の資本主義には、他人の資本を奪って自分がゆたかになろうという荒々しい側面がある。ところが『他人の役に立つことが人間のもっとも大きな喜びである』という原点が共有できれば、自己利益の追求が社会利益につながるシナリオも描ける」

 こういった発想は昔からあるという。「例えば『自利利他』という仏教の言葉。最澄が言ったとされている。『自利がそのまま利他である』というのは、さきほどと同じ『原点』に立っている」(堀内さん)。自分が生きていくために安心できることを行なうことがそのまま他人の利益になる、つまり利己的なことが利他的だという選択をすることで、生活者にとっての身近な問題を解決するクリエイティブ・チョイスが行なわれるのかもしれない。

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