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» 2009年08月14日 23時00分 公開

樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」:FinePix REAL 3D W1で感じた、2Dの呪い、3D普及の壁

人間の2つの眼が見ているように、なぜテレビでは表現できないのか――。そんな疑問を持つ筆者の前に、富士フイルムの3Dデジカメ「FinePix REAL 3D W1」が登場した。3D普及の壁を突破できるだろうか。

[樋口健夫,Business Media 誠]

 1977年、スターウォーズを初めてロンドンで見た時、感激のあまり同じ映画館に2日通った。レイア姫がホログラム立体像で突然現れて、どこにスピーカーがあるのか知らないが「わたしはレイア、助けて」と言うのを見た時に、筆者は未来は3D画像の世界に違いないと確信した。

 と同時に、「わたしたちが“写真”と称している2Dは、ひょっとするとまがい物ではないか。目の錯覚を起こさせて、2Dで我慢させられているのではないか」と疑いはじめた。

 人間の2つの眼が見ているように、なぜテレビでは表現できないのか――筆者はみんなより先に、“2Dの呪い”から目が覚めた。そして3D動画を中心に調べ始めたのだ。2006年、筆者は「日本3Dクラブ」(山縣敏憲会長)の会員となったほどだ。

従来の3D方式の“不自然さ”

 従来型の3Dの方式はいくつかあるが、よく知られているのは赤と青の別々の画面を重ねて専用のメガネで見る「画像分離方式」だろう。赤と青のフィルムを張ったメガネを付けて、色のずれた画面を見るのだが、なぜこんな不自然なことをしなければならないのか筆者にはよく分からなかった。

 また、偏光レンズを用いた「偏光表示方式」も、メガネをかけている筆者が上からもう1つメガネをかけるなんてこっけいだ。コンタクトレンズを使っているような鼻のかわいい日本人女性たちに、わざわざメガネをかけさせるのもどうかという気がする。

 左右に2つの画面を置く「併置立体方式」も一般に知られている。静止画の画面を分けて、両目の視線を故意に交差させたり、平行にさせたりして真ん中に立体画像を作るこの方法は、疲れるし、目が戻らなくなるのではないかという恐怖感さえする。これでは動画は到底無理だ。

 筆者の初孫が生まれた時、何とかその姿を3D動画で撮影しようと、ソニーのハイビジョンハンディカム「HDR-HC3」にペンタックスのステレオビューカメラアダプターとステレオビュワー「O-3DV1」を取り付けて、併置立体方式の動画立体で保存した。しかし、それでも十分に満足いく映像にはならなかった。接近して撮影する場合、アダプターが固定なので、うまく立体画像にならなかったからだ。

富士フイルムの「FinePix REAL 3D W1」は呪いを破れるか

「FinePix REAL 3D W1」。2眼を77ミリ間隔で搭載している
2つのレンズで2つの像を映し出す。実際の見た目には自然に合成されるので、写真のように分離されて見えるわけではない

 2009年8月8日、富士フイルムが3Dデジカメの「FinePix REAL 3D W1」を発売したと同時に、日本3Dクラブの会員であるという理由で、家の予算を無視して購入した。

 FinePix REAL 3D W1は、左右の目に匹敵する2つのレンズが付いたステレオデジタルカメラ。2つのレンズの視差を利用して立体表示を行う「両眼視差立体表示方式」を採用している。(人間の両目は、ごく自然に行っているが)両目の焦点を対象物に合わせていくシステムを、自動と手動の両方で可能にしたものだ。

 前述の画像分離方式や偏向表示方式のように専用のメガネも不要で、併置立体方式のように視線を意図的に変える必要もない。裸眼で3D表示が楽しめるのである。これはオートフォーカスとも比べられる技術ではないだろうか。

 撮影したのは、アイデアマラソン研究所の室内、外の通り、交差点、通りの花など。撮影時にも3D写真がカメラ背面のディスプレイに出るが、再生してみて驚いたのは、ディスプレイの中にアナザーワールドの3D空間が見えていて、撮影したものがその空間で生活しているように見えたこと。人の顔も3D画像だからこそ、はじめて鼻の高さやえくぼなどが見えてくるのだ。

 とはいえ、FinePix REAL 3D W1にはまだ不完全な部分もある。撮影ファイルの形式は静止画が「マルチピクチャーフォーマット(MPF)」(拡張子.MPO)、動画が「3D-AVI」(映像コーデックはMotionJPEG。2つのAVIファイルを1つのコンテナに収納した独自形式)を採用した――ということでも分かる通り、再生環境を選ぶのだ。現在は、本体の液晶ファインダーで確認するか、富士フイルムの3D対応フォトフレーム「FinePix REAL 3D V1」を利用するしかない。

 ただ今後は、ゲーム機や携帯電話、PC、テレビなどが対応することも考えられる。もし採用されれば、市場が爆発的に広がる可能性もあるのだ。この連載を担当している鬼編集者は、「さあ、どうでしょう」と、いまだに懐疑派だが、筆者は賭けてもいい。ドトールコーヒー10杯。10年後には呆れるほど、なんでもかんでも3D化されている。筆者が現役商社マン時代なら、「売らせてくださーい」と飛んでいく商品だ。

今回の教訓

 個人的には3次元画像より、4次元ポケットに期待してます。(鬼)


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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