「PCをもっとかっこいいものにしたい」――。この思いで就職、転職をした。マイクロソフトでハードウェア、Mac Officeのマーケティングを担当する大谷智さんの仕事術は「説明は単純化」「ショートカットキーではなくマウス」だ。
久々の更新となった「達人の仕事術」。今回訪ねたのはマイクロソフトのハードウェアと、Office for Mac(以下、Mac Office)のマーケティングを担当している大谷智(おおたに・さとし)さんだ。「PCをもっとかっこいいものにしたい」――。大谷さんの仕事はそんな思いから始まった。
大谷さんは約4年半前にマイクロソフトへ転職。それまでは、周辺機器メーカーのメルコ(現・バッファロー)で、営業やマーケティングを担当していた。
「当時は募集がSEしかなかった時代でしたね」。大谷さんの大学卒業時の1999年はまさに就職氷河期、就職浪人が多かった時代。そしてインターネットがようやく普及していたころでもある。ネットの求人に対応していない企業が多かった。「SEがどんなことをしているのかは知らなかったけど、僕は大学のころからPCは好きでした。一般的にはまだ浸透していなかったPCをかっこよくしたいなと思って、周辺機器メーカーのメルコに入社したんです」
入社当時メルコは一部上場を果たしたばかり。会社の勢いもあって拡大傾向にあった。しかし入社1年後の2000年、IT不況を迎えてしまう。2年目で社会人経験の酸いも甘いも見てしまったと苦笑する大谷さん。しかし若い人の意見を聞けという風潮もあったメルコでは、「やりたいことをやらせてもらった」という。「とりあえず思いついたことを実行していましたね」
そんなメルコの創業者、牧誠社長は今でも尊敬する人の1人だ。「やりたいことに対してビジョンを持っているし、レスポンスもものすごい早い。IT不況のときも転換が早かった。やっていたことが間違っていたらすぐ変えるところが、すごく影響を受けています」
3年目にPCのマニア向けブランド「玄人志向」のブランドマネジャーになった。「玄人志向」では企画や商談まですべて自分で行った。時には直接台湾に買い付けに行くことも。そこで見えてきたことがある。「日本の、特にPCパーツの市場はほかの国と比べるとすごく小さいんですよね。理由はPCへの取り組み方が日本とほかの国では違うから」。
日本では、多くの人がPCを持っていてもさまざなな機能を使ってない。しかし海外では何かを成し遂げるためにPCを購入するのを目の当たりにした。「例えばデザインをやりたかったら、グラフィックスボードを買うだとか。PCメーカーも大きいところが多かったというのもありますが、日本はそういう市場に合っていなかったと思います」
「そこを変えないと、玄人志向も周辺機器のビジネスも今後伸びないのではないだろうか。それに僕が最初夢に思っていた、PCがもっとかっこいいものとして、みんなに受け取られるってことにはならないなと思いました」と大谷さん。どこかが問題なんだけど、どこが変えられるのか――。それがマイクロソフトだった。
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