【番外編】『シャア専用手帳2010』で考える、シャアが使う手帳とは2009手帳特集“超”入門編(2/2 ページ)

» 2009年11月18日 16時00分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
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シャアが使う手帳を想像する

 ただし、これを「シャア自身が使ったか」と言えばどうだろうか。なぜならシャアは、宇宙世紀を生きた軍人だからだ。

 もしシャア・アズナブルが手帳を使っていたとすれば、ジオン公国が支給した軍隊手帳ではないだろうか。暦も2010年という西暦ではないはずだ。西暦は元々、ローマのカエサルが定めたユリウス暦をもとに、1582年にローマ教皇グレゴリウス13世によって作られた。このグレゴリオ暦は、太陽の周りを公転する地球の動きをベースに作られている。つまりガンダムの劇中で言うところの「宇宙圏」が存在しない時代の暦なのである。シャアなら「グレゴリオ暦は、“魂を重力に引かれた人たち”の暦なのだ」と言ったかもしれない。

 ガンダムの設定から考えると、人類が覚醒しようとしている時代の暦(=宇宙世紀)は西暦とは異なる。そして、スペースノイドの先駆けたるシャア・アズナブルの時代は、宇宙(そら)で生活することが当たり前なのだ。であるのなら、宇宙世紀は名前だけの暦ではないはずだと考える。我々が西暦や和暦で季節を確認し、ビジネスやプライベートのスケジュールを考えるように、シャアは宇宙世紀でスケジュールを決めていたと考えるのが妥当だ。

 次に便覧。こちらにも不可欠なものがある。それは軍規や軍律だ。

 ジオン軍やネオ・ジオンの軍規や軍律は、軍人であるシャアの手帳にはぜひ欲しい。もちろん捕虜の取り扱いや核兵器の使用禁止などを定めた南極条約の条約文は必須だ。条約違反はいち軍人としても軍法会議ものだし、国家に損害を与える可能性もあるからである。

 地図があってもいい。すなわち、スペース・コロニーや月、宇宙要塞ア・バオア・クーを含む宇宙図、あるは一年戦争初期における地球でのジオン軍勢力図などだ。おそらく劇中のシャア・アズナブルなら、それらの図を見つつ、ルナ・ツーからジャブローに向かおうとするホワイト・ベースの進路をそらしつつ、自軍の勢力圏内に落とすことを画策したに違いないのだ。

シャア専用手帳、現実にあり得るの?

シャア専用ケータイ
能率手帳キャレル。右上の西暦の下に和暦の表記も

 2007年秋冬モデルの携帯電話としてソフトバンクシャア専用ケータイを発売した。それは、作品世界に存在し得たかもしれないシャアが使った携帯電話というスタンスで作られたものだった。そして手帳も同様のスタンスで、すなわちジオン公国官給品としてのシャア専用手帳があり得るのではないかと考えるのである。

 もちろん現実の実用性を考えれば、西暦を採用するのはある程度仕方がない。ただ宇宙世紀の表記をベースにしつつ、西暦の現実世界でも使えるような工夫を、例えばシールなどを使って対応させる手はあるだろう。ちなみに2つの暦体系に対応した手帳は、すでにこの地球に存在する。英国統治時代が長かった香港の手帳は、英国の習慣や休日と、中国の休日を併記している。日本能率協会マネジメントセンターの「能率手帳キャレル」も和暦と西暦を併記している。こうした手帳が参考にはなるはずである。

 とはいえ、通常の手帳ですら使う人が必要十分と感じるスケジュールや便覧を詰め込むのは並大抵ではない。ましてやシャア専用となれば、先ほどの宇宙世紀の暦はもちろん、ジオン公国軍の軍規や軍律などに関する公式の設定を洗いなおす必要がある。

 もしシャア専用のジオン公国軍軍人手帳があったらどうだろう。それは作品世界に存在し得たかもしれない手帳を通じて、ガンダムという作品世界の一年戦争をリアルタイムの1年をかけて味わうことができる。そんな希有なメディアになる可能性があるのではないか……。

 『シャア専用手帳2010』を見ながら、使う人のための道具である手帳や、その発行元が架空の作品世界である場合の可能性にまで思いを巡らせてみた次第である。個人的にはいちファンとしてそれを見てみたい。できればプロデュースしてみたいと思うのだ。

著者紹介 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。


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