サラリーマンも個人事業主も――節税するならここがポイントイチから分かる確定申告(2/3 ページ)

» 2011年02月28日 20時50分 公開
[奥川浩彦,Business Media 誠]

個人事業主の節税は

 次は個人事業主の節税を考えてみよう。個人事業主の課税の仕組みは

  • 売り上げ(収入)−経費−各種控除=課税所得

 となる。税金を減らすためには、

  1. 売り上げ(収入)を減らす
  2. 経費を増やす
  3. 各種控除を増やす

 の3つだ。レアなケースだが個人事業主の場合は売り上げを減らすという考えも存在する。サラリーマンと違い月収や年収がバラつく職種の場合、年末の仕事を年明けにズラして平均化したいと思うこともある。納期が年末でも年始でも許される仕事なら売り上げで税金をコントロールすることも可能だ。

経費がポイント

 現実には売り上げを減らして税金を減らしたいと思う人は少ないと思うので、節税は残りの2つだ。まずは経費から見ていこう。第1回第2回で紹介した売り上げ800万円、課税所得350万円のケースで考えてみたい。もしプリンターとデジカメを買って10万円経費が増えたとしよう。経費が10万円増えると課税所得は10万円減り340万円となる。所得税を比較してみると、

経費 所得税計算
0万円 350万円×0.2−42万7500円=27万2500円
10万円 340万円×0.2−42万7500円=25万2500円

 となり納税額は2万円減ることになる。住民税の税率は市民税6%、県民税4%、合計10%なので、課税所得が10万円少なくなれば納税額が1万円減る。所得税と住民税で3万円の節税となる。10万円で買った物は税金で3万円(30%)ポイント還元された感じだ。所得税は課税所得の額で税率が変わる。課税所得が100万円の人は5%、300万円の人は10%、400万円の人は20%となるので、同じ10万円の経費でも、それぞれ1万5000円、2万円、3万円……と節税額は異なってくる。要するにもうかった年に経費を多く使えば節税効果が高いということだ。

 難しいのは個人事業主は翌年の売り上げはその年になってみないと分からないことだ。もし翌年に売り上げが激増すれば、翌年に買った方が得ということになる。とは言え起業して何年か経てば限界も見えてくるので、もうかったなと思ったら必要な物はその年に買って経費を増やそう。

償却期間を考える

 当然、昨年の経費を今ごろ増やそうと思っても遅い。確定申告の準備を始めてから「やばい、もうかっている」と気付いても時すでに遅しだ。

 だが、もし昨年10万円〜30万円未満の物を買っていたら、現在進行形の確定申告でも税金をコントロールすることが可能だ。10万円以上のものは固定資産となり数年に分けて減価償却する。例えば車のように長期にわたって使用するものは、年々価値が減少し耐用年数を経過したころには価値がなくなるとの考え方だ。

 これらの資産を購入した場合、購入した年の経費ではなく、数年にわたって分割して経費とするのが固定資産の減価償却だ。資産ごとに耐用年数が決められていて、鉄筋コンクリートの事務所は50年、車は6年、軽自動車は4年、テレビは5年、PCは4年、カメラは5年などとなっている。ざっくり言うと300万円の車は、毎年50万円ずつ6年間経費として落とせるということだ。

 減価償却には特例がある。10万円以上20万円未満の資産は一括償却資産として3年間で償却できる。一括と聞くと1年で一気に償却できそうなイメージがしてまぎらわしいが、制度名は気にしないことだ。さらに青色申告している個人事業主なら10万円以上30万円未満の資産は「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、その年に全額経費としても処理できる。

 これらの特例を使えば、確定申告の段階で償却方法を選択し税金をコントロールすることが可能となる。例えば24万円の望遠レンズを買ったとしよう。もうかっているなら「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」で全額を経費にすれば課税所得は24万円少なくなる。例年になく売り上げが激減した年なら、一括償却資産として処理すれば、8万円ずつ3年に渡り経費とすることができる。もし翌年から売り上げが増えれば、トータルで節税することが可能だ。4年後には売り上げ倍増の自信があるなら定額法で5年償却の方が得かもしれない。

インフレ時代の確定申告

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