自分なりの「ポジティブスイッチ」を作る方法ストレスをためない技術

音楽や映像、写真――。自分なりの「状態改善スイッチ」を持っていれば、嫌なことがあってストレスを感じているときでも、案外簡単に気持ちを入れ替えることができます。

» 2014年01月22日 11時00分 公開
[松島直也,Business Media 誠]

集中連載『ストレスをためない技術』について

 本連載は、2012年2月16日に発売の松島直也著『ストレスをためない技術』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 ストレスは、決してなくならない。ストレスはできるだけ感じたくないものです。けれど、世の中からストレスは決してなくなりません。一歩外に出れば、さまざまなことがストレス要因となり、あなたを襲います。自分だけが「安全地帯」に逃げ込むことはできないのです。

 大事なのは「ストレスをなくすこと」ではなく、「どう付き合うか」を知ることです。本書では、NLP(神経言語プログラミング)の専門家である著者が、ストレスとの正しい付き合い方を紹介します。


 前回「自分の席が『ネガティブスイッチ』になっていませんか?」では、「ネガティブなスイッチ」となっているアンカーリングをポジティブなものに入れ替えるアプローチを紹介しました。

 ここでは少し角度を変えて、「もともとポジティブなスイッチとなっているもの」を仕事に持ち込むという方法にトライしてみましょう。

 もっとも分かりやすいのが音楽。ある決まった音楽を聞くと、自然に気持ちが安らいだり、気分が高まることがあるでしょう。多くのスポーツ選手が大会前にお気に入りの音楽を聞いてリラックスしたり、集中力を高めているという話はよく聞きます。

 あれもまさにアンカーリング。「お気に入りの曲=安らぐ」「お気に入りの曲=やる気が出る」というリンクができているのです。その効果をあなたの仕事にも役立ててください。

 方法はとても簡単。会社に着いて自分の席に座ったとき、イヤホンを使ってリラックスできる音楽を聞く。それだけで自分の状態は大きく変化しています。こんなことを紹介すると「何だ、そんなことか」「音楽なら普段から聞いているよ」と思う人も多いでしょう。実際、通勤時に音楽を聞いている人はたくさんいます。それも確かに効果があります。

 ですが、1つ注意してほしいこともあります。通勤時に音楽を聞く人の多くは、会社に着くと音楽を止めるはず。会社に着いて音楽を止めた瞬間、その「止める」という行為自体が「ああ、これから仕事だ。嫌だなあ」というネガティブなスイッチになってしまっている可能性があります。

 それではまるで逆効果です。ここでお勧めしているのは、自分の席に着くときに、あえて「ポジティブなスイッチ」としてお気に入りの曲を聞くという方法。心の中で歌うのも効果的です。5分ほど会社に早く行って状態を整える時間を設けるだけで、仕事への入り方は大きく変わります。言ってみれば「よい状態で仕事を始める儀式」です。

 音楽に限らず、他のアイテムをアンカーリングに使うこともできます。例えば写真。家族の写真を見ることで気持ちが安らいだり、やる気がアップしたりすることもよくあります。私の知り合いの営業マンは、「伝説の営業マン」の写真をいつでも持ち歩き、自分のモチベーションアップに利用しています。

 仕事が上手くいかなかったとき、その瞬間は誰でも落ち込みます。ですが、写真が「状態改善のスイッチ」になっていれば、そこで気分を変えることができます。無理にポジティブ・シンキングをしようというのではなく、ただ写真を見たり、音楽を聞いたりしながら、自分の状態が変化するままに任せればいいのです。

 その他、オフィスに賞状やトロフィー、自分が掲載された新聞、雑誌などを飾っている人もよく見かけます。経営者に多いパターンですね。もちろん彼らは単に飾っているだけかもしれませんが、それらのアイテムを見て「よし、やるぞ!」という気持ちになれば、それでも十分な価値があります。

 写真や現物によるアンカーリングに慣れてくると、実際の写真がなくても記憶を呼び起こすだけで、自分の状態を改善することができるようになってきます。私の場合、ハワイのワイキキビーチでのんびりと読書をしている場面を思い起こすことで、その当時の「おだやかで、落ち着いた状態」が再現されます。

 何か嫌なことがあったとき、プレッシャーのかかる仕事の前、初対面の人と会うときなど、自分の緊張感が高まるときには意識的に「リラックスのスイッチ」(ワイキキビーチの風景)を思い出し、状態を整えるようにしています。とても簡単ですし、時間だってわずか1分程度のものです。

 せっかくなので、アンカーリングのさらなる応用もご紹介しておきましょう。それは「自分のポーズ・仕草をスイッチにする」という方法です。スポーツの試合で得点を決めたとき、ボウリングでストライクを取ったときなど、私たちはよくガッツポーズをします。

 「何かを達成して、よい気分のとき→ガッツポーズ」というリンクができているからです。そのリンクを逆に利用して「ガッツポーズをして、よい気分を呼び起こす」というアプローチも可能です。「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」という言葉がありますが、まさに同じ論理です。

 気分が落ち込んでいるときにあえてガッツポーズをすると、多少なりとも状態が改善されます。私たちの脳は「ガッツポーズ=気分がよい、達成感がある」と認識しているので、偽のガッツポーズでもそのアクションにさまされて「よい気分」を再現しようとするのです。

 さらに上級者になると「小さなアクションで自分の状態を切り替える」という方法を採用している人もいます。例えば何か考え事をするとき、顎に手を持っていく人がいるでしょう。そのクセを利用して「物事を客観的に考える=顎に手を添える」というリンクを自分自身で決めてしまうのです。

 最初は意識して「顎に手を添えて、客観的に考える」ということを繰り返しているうちに、脳がその意味付けを記憶するようになり、顎に手を添えると自動的に客観的になるようになります。

 すると何らかの問題に直面しているとき、嫌なことがあってストレスを感じているときなどに、ふっと顎に手を添えると自然に視点が切り替わり、客観的になれるというわけです。最初はクセでしかなかった「小さな仕草」を状態改善のスイッチにしてしまうのです。

 会議などで発表をする前、顎に手を添えればそれだけで客観的になり、普段より少し冷静になることができます。あるいは、苦手な人と対峙しているとき、そのさりげないスイッチを入れることで、過度に感情が揺さぶられるのを防ぐこともできます。ややむずかしい方法ですが、興味のある人はぜひ試してみるといいでしょう。

 音楽や映像、写真やその他のアイテム、あるいは自分の行動、ポーズなどスイッチの種類は何でも構いません。大事なのはスイッチを持っていること。自分なりの「状態改善スイッチ」を持っていれば、案外簡単に気持ちを入れ替えることができます。

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