一通り話を聞いたところで、実際にShiftに座ってノートPCで作業をしてみた。
驚いたのは、座るだけで自然にノートPCを使う上でもっとも楽な姿勢へと導かれたことだ。座面の緩やかな傾斜が深座りと後傾姿勢をサポートし、快適な姿勢が保たれる。また、腰から背中にかけて背もたれが吸い付くようにフィットし、腰が一気に楽になるのを感じた。
まるで、誰かが自分の体型に合わせてそっと背中や腰を支えてくれているかのようだ。
――自然に楽な姿勢が取れますね。足を伸ばした状態で座っても、お尻や腰に緊張感を覚えません。
山崎氏: 楽な姿勢を取るために、座る人がいろいろ考えたり緊張を強いられては元も子もありませんからね。何も考えず座って楽になる。それを目指して開発しました。
――Shiftでは机が傾斜しているのも特徴的です。
山崎氏: これも、人間工学に基づいたデザインになっています。机と椅子をセットで設計しないといけない理由は、たとえ楽な姿勢を取りやすい椅子に座っていたとしても、ノートPCで作業する限り、いつの間にか前のめりな姿勢になってしまうからです。
いろいろ実験を重ねるうちに、机の高さを70センチにし、ノートPCを10度程度傾斜させたら、背もたれに体を預けた姿勢でもキー操作が楽になることが分かったのです。
ただ、机の傾斜が10度だと、マウスが滑り落ちてしまう、ということで、製品化されたものは傾きを6度にとどめてあります。ノートPCの下に何かをはさみ、好みの角度にして下さい。
――それで、椅子と机の両方を合わせて開発しないといけないのですね。ところで、ノートPCで仕事をする人が、今すぐ職場で実践できる「目・首・肩・腰」を楽にする姿勢を教えていただけますか。
山崎氏: 机に合わせて座面を高くしている人が多いと思いますが、逆に座面をできるだけ低くしてください。そうすると、まず足が楽になります。また、目線も下がるので目と首が楽になります。できるだけ深く椅子に座り、背もたれを倒して体を預ければ腰への負担が軽くなります。机が広ければ、できるだけノートPCは奥に設置します。そして体を机につけるように椅子を近づけて、腕を机の上に載せて作業してみてください。これで腕を自分で支えずに済むので、肩が楽になります。
また、ノートPCの後ろの下に何かはさみ、キーを傾けると、手首も楽になり、かつ、画面が上がって、さらに見やすくなると思います。座面が下がらない場合や机が高すぎる場合は、足台を工夫して下さい。
――これまで、背筋はできるだけピンとしている方がいいとか、背もたれに寄りかかると筋力が衰えてしまう、などと考えていました。
山崎氏: 大切なのは、作業に合わせた楽な姿勢を取る、ということなんです。書き物をするとき、何かを読むとき、ノートPCで作業するときなどそれぞれに適した姿勢があるんです。最近では職場に決まった席がないフリーアドレス制を採用している企業も増えていますが、仕事の内容や使うツールに応じて、用意する環境も変えなければならないということを企業の方々には知ってほしいですね。
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