ビジネスに必要な視点はデジタルカメラが教えてくれたナレッジワーキング!!

物事を分析するときには、まったく異なる2つの視点から見ることが重要です。カメラ用語には「視点」「ビジョン」「フォーカス」など、モノの見方に関するキーワードがちりばめられています。

» 2014年06月12日 13時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 ビジネスに、デジタルカメラとビデオカメラ、2つの撮影感覚を持ち込みましょう。瞬間を切り取ることと動きをとらえることは、まったく別の視点で物事を見ることと同じです。両方の目を肥やすことで、偏った見方をせずにしっかり分析できるのです。

一眼レフで瞬間を切り取る感覚が「定点観測」

デジタルカメラ

 最近、子供の記録写真用に一眼レフを購入しました。これまでコンパクトデジタルカメラを使っていたのですが、背景がうまくぼけなかったり、焦点が合うまでに時間がかかったりと思ったような絵や構図がとれずにいたのです。

 一眼レフで撮影して、あらためて感じたのが「瞬間を切り取っている感覚」です。私たちの世界は3次元で、なおかつ無尽蔵に動いているわけですが、ここから「2次元の絵を切り取る」という感覚は、ビジネスにおける定点観測に近いものです。

 例えば、会社の経営成績を表す財務諸表には、資産と負債・資本の残高を示す「バランスシート(B/S)」があります。これは決算期の初日や締め日の財務状態を表しているわけで、過去のある瞬間を切り取ったものです。こういった観測を定点観測といいます。

 筆者自身、M&Aのデューデリジェンス(投資対象の価値やリスクを事前にチェックすること)や他社の経営分析などで、しょっちゅうバランスシートを見ています。「バランスシートで財務などの健全性を測ることができる」といいますが、しょせん過去のデータ。瞬間を切り取ったデータを使うときには、そのあたりを間引いて評価する必要はあるでしょう。

ビデオカメラで動きをとらえるのが「トレンド観測」

 ビデオカメラを回している間に被写体がどのように動いたか直感的に分かります。例えば、子供が歩き始めたと思ったら勢いよく倒れたり、そうかと思ったら走りだしたりとまったく予測がつきません。このように、一定期間の動きをビデオカメラで録画したかのように見るのがトレンド観測です。

 「A社の今年の売上は100億円」という定点観測データからは、一見、A社の業績が好調のように思えます。しかし、「A社の前年の売上は150億円」となればトレンドは売上急減だと分かります。このように時間という軸に合わせて、過去の数字をマッピングすれば、詳細な未来予測は無理だとしてもおおまかな方向性をつかめるのです。

 ただし、「ボラティリティ(変動幅)」には注意が必要です。大まかな流れは一定方向に向かっていても、その途中で数字は乱高下することがあります。最近の株価や気候変動のように、ボラティリティが高い傾向にある場合には、数字に振り回されないように大局をつかむことが大事です。

木を見るのか、森を見るのか、構図の決め方がカギ

 撮影で重要なのは構図です。フレームの中に何をどの大きさで入れるのか。構図を決めることは、被写体のどこに着目したメッセージにするのかということと同じです。

 ビジネス分析も同様で、どこまで広げて数字を見るかで、その数字が意味するところは変わります。例えば、1つのサービスや事業としては赤字でも、会社全体のエコシステムに不可欠な要素もあるでしょう。逆に、単体としてはもうかっていても会社のコアコンピタンスと離れたものであれば、継続する意義は微妙です。

 1つの構図で伝えたいメッセージにたくさんのものが含まれていると、かえって伝わりにくくなります。「視点」「ビジョン」「フォーカス」など、ビジネスにはカメラや眼にまつわる言葉が多いことに気付きます。それだけ、カメラをどこに向けるか、どのように切り取るか、どのような動きをとらえるかで、モノの見方は百人百様であるということです。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

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