「もはや残業は美徳ではない」――ファイザー(前編):“有給&残業”攻略法(2/2 ページ)
「金曜は正午で退社」「特別休暇の種類も豊富」――ファイザーの残業削減と休暇取得への取り組みについて、2回に渡って見ていこう。
金曜日以外は? 残業増加への対策
では金曜日以外はどうなのか。
本社では月、火、木曜日は午後8時30分、水曜日はノー残業デーとして午後6時30分を退社目標としている。臨床開発部門に限っては、海外とやりとりがあるために、海外が休日となる月曜をノー残業デーとしているそうだ。
ノー残業デーは1998年から導入していたものの、本社では2006年から2007年にかけて社員数が減り、以前に比べ残業時間が平均で約30%増加してしまった。これをきっかけに残業を削減する動きが高まったのだという。
長時間労働者に対しては、直属の上司だけではなく、その上の上司、場合によっては部門長と人事担当者との3者面談を実施し、業務上の問題点の洗い出しと改善方法の解決を探る。36協定(※)を順守するため、36(さぶろく)協定の事前手続を勤怠システムに取り入れた。「勤怠システムで、労働時間が月30時間を超える場合には事前に申請、承認を行います。必ずその上司と労働時間が超える理由を確認してもらいます。上司と部下とのコミュニケーションツールとしても使えます」(奈須野さん)
※36協定
そのほか、すべての部門に個々の目標退社時間を書き込めるポスターや、音楽で退社を促す時計を配るなど、社員のマインドセットのための試みも行っているという。会社のイントラネットとして、社員が仕事の効率化に関する報告・提案の投稿ができる「カイゼンWeb」を立ち上げた。カイゼンWebへの提案件数は延べ5000件に及ぶという。「投稿された改善提案を見て、自分の仕事にも当てはめてみる人もいるようだ」(海宝部長)
さらに人事では、率先して月、火、木曜日は午後8時、水曜日は午後7時、金曜日は午後6時に人事部門のスペースの電気を消して回るなどの活動も行っている。こうした取り組みも含め、徐々に残業時間は減り、現在、本社の平均は2007年以前の数値まで戻ってきているという。
「これまで遅くまで残って仕事をすることが、ある意味“美徳”になっていたり、上司がいると帰れないという意識もあった。社員全体に時間通りに帰るのが普通だと浸透しつつあり、帰りやすくなってきていると思う」(海宝部長)
残業削減への取り組みは一見順調に思える。しかし仕事量が減らないという現実は当然あるはずだ。後編ではファイザーがこの現実にどう向き合っているのかについて触れたいと思う。
関連記事
- “有給&残業”攻略法:20年連続で、全社員が有給消化できたわけ――六花亭製菓
5月の総務特集第2回は、六花亭製菓の有給休暇取得への取り組みを紹介する。20年連続で全従業員が有給休暇を完全取得できたその理由とは? - “有給&残業”攻略法:「ためらう」のはなぜ?――有給休暇を消化できない事情
「有給休暇を使い切ったことなんてない」。年次有給休暇を消化できない理由は、職場の雰囲気にあった? - 景気悪化も一因? 働きすぎの日本人、有給消化日数が11カ国で最低に
日本の有給休暇平均取得率が11カ国中最低に。また前年より有給休暇が取りにくいと感じている人が7割を占めた。 - 月刊総務共同特集:“有給&残業”攻略法
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.