湯川秀樹も愛した日本最古のシステム手帳、よみがえる“システムダイアリー”:手帳2013(3/3 ページ)
手帳が好きな人ならその名を知っているであろうシステムダイアリー。1968年に誕生した純国産のシステム手帳だ。最近はやや影が薄かったが、復活の兆しが見えてきた。きっかけは1人のユーザーの小さな偶然からだった。
一列だった売り場が専用台に拡大
朝注文して夕方の配達が定着すると、販売店側でも「システムダイアリーのものは全部受けちゃいましょう」となった。システムダイアリーの取扱商品は、販売店が営業してお客さんに勧めてくれるようになったのだ。また、取扱い店の人はみな文具好きであることも分かってきた。そこで「信頼に応えなければ」となり、1年かけてシステムダイアリーの商品を欠品なしにした。
これはメーカーとしては当たり前のことだが、商品供給に課題を抱えていたシステムダイアリーとしては、最初は大変なことだったという。以来、自動車の仕事で地方に行くと、必ず見本を持っていくようにした。地方のオーダーには当日発送し、翌日か翌々日着を心掛けるようになったという。
こうした営業努力の結果、ある大手文具店で一列だけだった売り場は、専用の台をもらえるまでになった。漆谷氏の社長就任後、売り上げは以前の3倍に伸びた。奇跡のV字回復を果たしたのだ。
システムダイアリーはよみがえる
ようやくここまできた。2年の歳月を費やしてここまでたどり着いた現在の課題は、新規取引への対応と新商品の投入だ。販売体制の一新と業績回復のうわさを聞きつけて、新規取引の希望が増えたが、待ってもらっている店舗も多いのだという。
新しいリフィル保存ボックスは、金型を起こして製造、販売されている。また好評だった耐水紙「ウルトラ紙」に変わる新しい耐水紙も販売が間近に迫っている。
さらに手帳のオーダーもやっている。女子栄養大学など、オリジナルのバインダーやリフィルの制作にも対応している。
かつては、日本製の逸品として名をはせたシステムダイアリーは、手帳が注目を浴びるようになった今、よみがえろうとしている。手帳市場に占める割合はまだまだ小さいシステムダイアリーの商品ラインアップがどうなっていくのか、そして市場からどう評価されていくのか。新経営者を迎えてのシステムダイアリーの今後に注目、期待したい。
著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)
手帳評論家。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売
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