中国でも「品質さえよければ必ず売れる」と思っていませんか:中国ビジネス、ここだけの話
来日10年の中国人社長が教える「中国ビジネス、ここだけの話」。第2回は日本製品の品質の良さにあぐらをかいていては売れないというお話。日本でやっていたことがなぜ中国でできないのでしょうか。
昔、日本製品は中国で絶大な人気だった。
「品質さえよければ……」は危険
1980年代の中国で日本製のカラーテレビを持つことは、お金持ちのシンボルだった。1990年代、ホンダのアコードに乗っていたら町の人々から羨望のまなざしを送られた。そういった日本製品の“武勇伝”を日本企業の経営者は今でも語りたがる。「日本製品は品質さえよければ、必ず中国で売れる」と。
これは大変危険な思いこみにほかならない。
20〜30年前の中国は商品が乏しく消費者も弱かったため、高品質な日本製品の優れた性能に驚き、日本製品の虜になってしまった。しかし21世紀に入り、欧米や韓国などの国も中国の巨大消費市場に対して精力的に売り込んできたため、日本製品の優位性は徐々に低くなってしまった。PC市場では中国レノボに敗れ、携帯電話市場では米国アップル、韓国サムスンに負け、日本の携帯ブランドは中国市場からほぼ全滅で撤退せざるを得ないまでに追い込まれた。
中国進出に頭を悩ます日本企業のトップからは「うちの商品はさ、こんなに品質がいいのになぜ選んでくれないのかなあ?」というつぶやきがよく聞こえる。 なぜ……? 私から言えば「品質さえよければ、必ず中国で売れる」というのはただの思い込みなのだ。
確かに日本製品の品質は周知の事実。ただ、今の時代はありとあらゆる商品があふれてかえっているから客も選択に疲れている。有名なブランドでもなければ、今まで使い慣れている商品を継続的に購入する傾向が著しい。
なぜかサービスのクオリティーが急に悪くなってくる不思議
日本の商品は欧米、韓国に比べ、中国市場に対する重視度が不足しており商品宣伝が遥かに足らなかった。その原因を追究すると、やはり日本企業の怠慢だと言わざるを得ない。
「お客様がすべて」「お客様を大切にします」と標榜した数多くの大手会社は中国に進出したら、なぜかサービスのクオリティーが急に悪くなってくる。おそらく「現地スタッフの素質がよくない」など片付けられてしまうかもしれないが、現地社員の教育が行き届かない責任はやはり上に立つ人間の「中国だから、日本みたいな完璧なサービスはむしろ必要がないんじゃないか?」という思惑にあっただろう。
昔ある日本の大手電器会社が携帯電話を中国で販売を始めた時、肝心な中国語入力機能さえ搭載していなかったという。冗談のような本当の話である。
「品質」+「宣伝」+「お客様への尊重」。これは日本企業が日本で当たり前にやっていること。同じように中国で実践してみたらどうか。ただそれだけで、御社のお客様へのまっすぐな気持ちは必ず中国人消費者に伝わるのである。
日本の企業はいつまでも自社製品の高品質ばかりにこだわりすぎるのは、たいへんもったいない話である。せっかく良い技術、製品が持っているのだから、もっとプロモーションに力を入れて欲しいと思うのが私の願いである。
※この記事は、誠ブログの「一葉落、知天下秋 - 中国人在東京:『中国ビジネスのここだけの話Vol.2』-品質さえよければ、必ず中国で売れるってただの思い込みだ!」より転載、編集しています。
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