小日向: 全然まとまりないですよ。「豊臣のため」と思っている人がいる一方で、「武功を立てて名を上げたい」という野心を持つ人だったり、明石全登のようにキリスト教の布教のためと言っている人だったりと、それぞれ戦に参加した目的が異なります。理由あって居場所がなくなっている浪人たちは自己主張が激しいです。
現実のビジネスに置き換えると、ライバル社を倒すために、有能で個性的なフリーランスの人たちが集まってチームを結成したような感じですね。ただフリーランスの人に愛社精神があるかどうかは別です。
そうした個性派集団の現場を信繁がうまくまとめました。信繁が他の4人が「なぜここにいるか。何が欲しいのか」について腹を探り、説得していく姿にはリーダーシップを感じましたね。
しかし、こうした組織だと何と言っても雇い主の意見が絶対ですから……。
編集部F: そうした彼らの思いを茶々にくみ取ってもらいたかったですね……。もっとも茶々の気持ちも分からんでもないのですが。秀頼を危険な目に遭わせたくない、そのためには堅ろうで天下一の大坂城にいれば安心だ、兵糧も数年間分は貯蔵してあるし。ただ、信繁も「その先はどうなる?」と突っ込んでいたように、近視眼でしかなかったのは否めません。
小日向: 茶々も落城を2回経験していますし、人間不信の節があるでしょう。それぞれの立場があるので、何とも言えませんが、結果的に豊臣方は滅びたわけですし、その原因の一端にはこうした組織的な内部崩壊というのも大いに関係していると思います。
もっとも、徳川勢も決して一枚岩だったとは言えませんけどね。関ヶ原の戦いからしばらく平和な時代が続いていた間に、当時現役だった武将の多くはいなくなり、大坂の陣で初めて戦争を経験するという武将も少なくありませんでした。端的に言うと、徳川勢はそれほど強くはなかったのです。個々人の能力に加えて、しぶしぶ参戦していた大名もあったでしょうから、それらをまとめていくのは大変だったと思いますよ。
ただ、片桐且元から情報を引き出すドラマのシーン。うまく部下を使うところに、徳川家康さすがのマネジメント能力の高さを感じましたね。
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