日本プロ野球機構(NPB)の調査によると、プロ野球を引退する選手は毎年90〜120人前後存在するが、そのうちコーチ、解説者、球団職員など野球関係の職種に就く人は約70%で、一般企業に転身する人は約30%にすぎないという。
ただ、コーチや解説者としてプロ球団や大手メディアと契約できる人は一握り。それ以外の人は、社会人野球界、大学野球界、外国のプロ野球界のポストを求めて競争することとなる。
引退後のプロ野球選手がこうした道をたどる理由について、奥村氏は「『自分は今まで野球しかやってこなかった』との考えを持ち、業界の外に出るのをためらう人が多いから」と説明。「別の職業を紹介されてもすぐに辞めてしまう人もいる」と明かす。
「だが、本当に野球の世界でしか活躍できないのか。われわれは選手の相談に乗り、さまざまな可能性を示したい」という。
奥村氏が率いるADCPAはこれまで、講演、セミナー、メディア出演といった活動に取り組み、スポーツ選手のキャリア選択に関する知識を伝えてきた。
今後はさらに力を入れ、(1)若手選手や保護者・指導者への啓蒙(けいもう)活動、(2)現役選手向けのキャリア相談窓口の開設、(3)引退選手のキャリア選択の支援――などを相次いで始める予定だ。
当初は奥村氏の専門である野球が中心だが、今後5年間でサッカーやバスケットボールなど、他の競技の選手にも支援の手を広げていくという。
若手選手などへの啓蒙活動を強化する理由は、スポーツと学業に正しく向き合えば、仮にプロで通用しなかった場合でも、ビジネス界で活躍できるということを伝えるため。
「『スポーツだけしていればいい』という考えを持つ人は若者・保護者・指導者にも多い。高校などでは、競技で結果を出している生徒は、授業中に寝ていても黙認される環境もあるが、こうした意識を変えたい」
奥村氏は「岐阜県立土岐商業高校で簿記を学んだことが、公認会計士というセカンドキャリアを選ぶ上で役立った」といい、「若いころに学んだり経験したりしたことは、思わぬ形で将来に生きてくる。いろんなことにアンテナを張り、可能性の種をまいてほしい」と呼び掛けた。
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