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なぜ「ストレスチェック制度」は浸透しないのか?メンタルヘルス不調者は増加傾向(2/5 ページ)

» 2018年10月20日 09時50分 公開
[村松容子ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

(3)休職・退職が「増えた」企業が多い

 日本生命保険相互会社が、取引先企業に対して行った調査(※6)によると、メンタルヘルス不調による休業・休職制度の利用者数、および同理由による離職者数がこの5年間で「増えている」と感じている企業が、それぞれ34.7%、19.6%と、「減っている」と感じている企業を上回る(図表3)

(4)「メンタル不調」への20〜30歳代の不安は大きい

 メンタルヘルスの不調は、他の疾患とは異なり、若年でも発症のリスクを感じている。ニッセイ基礎研究所が行ったアンケート調査(※7)によると、病気やケガ等に関するリスクを21項目挙げて、それぞれについて自分に起こり得るかを尋ねた結果、「メンタルヘルスの不調」を「きっと起きる(既に起きている)」「近いうちに起きるかもしれない」と感じている割合は、20〜30歳代で2割弱と、他項目と比べて高かった(図表4)

 特に、「きっと起きる(既に起きている)」は、20〜30歳代で5%を超え、他年代より高かった。

図表3 メンタルヘルス不調による休業・離職者の増減(左)、図表4 自分に起こり得ると考える病気やケガ 図表3 メンタルヘルス不調による休業・離職者の増減(左)、図表4 自分に起こり得ると考える病気やケガ

※6 日本生命保険相互会社「福利厚生アンケート調査(18年1月)」。17年5〜10月実施。日本生命保険相互会社の顧客企業・団体(従業員・職員数300人以上)1274社が対象。898社が回答(回収率70.5%)。

※7 「健康に関する調査」。14年9月実施。20〜69歳の男女個人(学生を除く)を対象としたインターネット調査。

ストレスチェック制度の概要と結果の活用の状況

(1)ストレスチェック制度の概要

 このような背景の中、メンタルヘルス不調を未然に防止するために、15年12月に「ストレスチェック制度」が導入された(※8)。

 ストレスチェック制度は、主に2つの使い方がある。1つは、従業員が、アンケートに答えることで、自分のストレスの状態を知り、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらうことで予防するものである。

 もう1つは、職場が、部署等の集団ごとの集計結果(※9)を分析し、集団ごとの職場環境の改善を行うことで予防するものである。

 国では、(1)ストレスの原因、(2)ストレスによる心身の自覚症状、(3)従業員に対する周囲のサポートの3つの視点からストレスの状況を確認できる質問を推奨している。

※8 「労働安全衛生法」により、常時雇用する労働者が50人以上の事業場で義務付けられた。契約期間が1年未満の従業員や、労働時間が通常の従業員の所定労働時間の4分の3未満の短時間従業員は義務の対象外である。

※9 個人が特定される恐れがあるため、受検者全員の同意がない限り、10人未満の集団の集計は行ってはいけない。

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