#SHIFT

私が「ドラクエ」から“Vチューバー”アイドルのプロデューサーになった理由スクエニ取締役・齊藤陽介の仕事哲学【後編】(2/6 ページ)

» 2018年12月25日 08時15分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

AKB48劇場を手本に

――「GEMS COMPANY」は当初、YouTube配信などの活動で「スクウェア・エニックス」という看板を外されていましたね。何が狙いだったのでしょうか。

 実は何がやりたかったのかというと、プロデューサーの秋元康さんがAKB48劇場でやられていたような展開なんです。AKB48は今でこそ国民的なアイドルグループになりましたが、もともとの始まりは秋葉原の小劇場でした。最初は舞台に立っている女の子たちよりもお客さんの数が少ないところから始めるという、ああいう泥臭いサクセスストーリーが必要だと思っていて、これが一番初めにやりたかったことなのです。

 もちろん、会社のブランドを外して、自分たちの力でどこまでできるのかを見たかったというのもあります。実際に当時のネットの反響を見ても「ものすごいハイクオリティーなVチューバーが来たぞ」と騒がれていたので、まさに狙い通りでした。

――初音ミクのライブで味わった感動など、齊藤さんは「面白い」というご自身の体験や感覚から企画が始まっているように思います。やはりこういったご自身の「感覚」がプロデューサーの仕事の中では大切になってくるのでしょうか。

 プロデューサーは「商品」を作るのが仕事だと考えています。ですので、「これでお客さんが本当に喜んでくれるのか」ということを考え続けているわけですが、とはいっても100人お客さんがいれば100通りの考え方があるのです。だから結局は、「自分が面白いかどうか」という感覚しか信頼できる物差しがないんですよね。

 逆にいえば、自分が面白くないと思っているものなのに、お客さんからは面白いと思ってもらえるというのもちょっとおかしいじゃないですか。独りよがりに聞こえてしまうかもしれませんが、「自分が面白いと思えるものこそお客さんにも面白いと思ってもらえるに違いない」と信じてやっています。

phot 珠根うた(c)2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.