小規模な紛争・治安維持と、MSが実用化されてレーダーが無効化された戦争とでは危険の度合いが全く違う。危険手当や恩賞、戦後の福利厚生や年金などの積み増しが少なければ、軍のモラルを維持することは難しい。内通や軍需物資の横流しなどで私腹を肥やそうとする兵士・将官がいても不思議ではない。
労働経済学の分野に「効率的賃金仮説」という概念がある。労働者の生産性よりもあえて高い賃金を支払うことで、全体の生産性が高まるという考え方である。例えば、食糧事情の良くない発展途上国では、賃金を上げることで、労働者が摂取する栄養が増え、健康・体力が増進して生産性が増加する。家族の健康状態の改善にもつながれば、労働意欲も増すだろう。
現金を扱う職業、例えば、銀行員の給料が他の職業よりも良ければ、不正を働いて解雇された場合のコストが高くなるので、横領が減る。行員を監視するためのコストも削減できるので、全体としての生産性は高くなるかもしれない。
あくまでも、効率的賃金仮説は“仮説”ではあるが、昨今の国家公務員、特に高級官僚の汚職は、生涯賃金はともかく、労働時間や責任、求められる能力と比べて、現役時代の賃金が低いことが一因のように思える。平時の文官でさえこのような行動を取るのであれば、待遇に不満がある戦時下の武官はなおさら悪質な不正を行っても不思議ではない。
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