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「赤い彗星」のシャアはなぜスピード出世できたのか?元日銀マン・鈴木卓実の「ガンダム経済学」(7/7 ページ)

» 2019年02月05日 06時30分 公開
[鈴木卓実ITmedia]
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「嫁ブロック」がガンダムの歴史に影響?

 「史記」に、飛鳥尽きて良弓蔵められ、狡兎死して走狗烹らる、という一節がある。用がなくなれば、有能な者でも使い捨てられることの例えである。一年戦争後のホワイトベースのクルーで地球連邦軍に残った者は、閑職を与えられ、前線からは遠ざけられた。

地球で再会するアムロとシャア=映画『機動戦士Zガンダム −星を継ぐ者−』より 地球で再会するアムロとシャア=映画『機動戦士Zガンダム −星を継ぐ者−』より

 戦争博物館の館長に就いたハヤト・コバヤシは、孤児だったカツ、レツ、キッカを養子に迎え、妻のフラウ・ボウが妊娠中という、守るものが多い身であった。そのハヤトが、地球連邦の仕事を投げ出し、反ティターンズ勢力のカラバに身を投じたのは、今日の日本の価値観からは奇異に見える。

 戦争博物館の館長は安定した仕事だろうし、文化施設の長は名士でもある。地位も名誉も収入も投げ捨てて「転職」したわけだが、よほど妻であるフラウの理解があったのだろう。既婚男性が、妻の反対で転職や独立が阻まれるという「嫁ブロック」はなかったようだ。

 ハヤトがカラバに参加したことで、フラウはアムロの元を訪れる。その行動が、アムロとシャアの邂逅へとつながったと考えると、「一家庭の嫁ブロックの有無が歴史を変えた」と言っても過言ではないだろう。

 志あるサラリーマン・公務員にとってはテンションが上がるストーリーだが、このガンダムの逸話を持ち出しても、嫁ブロックを崩せるとは限らない点は留意していただきたい。

著者プロフィール

鈴木卓実(すずき・たくみ)

たくみ総合研究所・代表。エコノミスト、睡眠健康指導士。ガンダムと同じ年齢(1979年生まれ)。新潟生まれ仙台育ち。仙台育英学園高等学校出身。地元での仮面浪人を経て、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。2003年、日本銀行に入行後は、産業調査や金融機関モニタリング、統計作成等に従事。2018年より現職。経済家庭教師や各種セミナー(個人向け、企業向け)、経済・金融や健康リテラシー向上のための執筆、アドバイザーなどを通じて情報発信を行う。楽天証券トウシルにて「数字でわかる。経済ことはじめ」、東洋経済オンラインにて「あの統計の裏側」を連載。ビデオニュース・ドットコム「マル激トーク・オン・ディマンド」(第929回)へ出演。


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