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ジャンプ「伝説の編集長」がFGO誕生に関わった“黒子”、電ファミニコゲーマー編集長と考えた「ドラゴンボールの見つけ方」「マシリト」こと鳥嶋和彦が語るキャリア論【後編】(4/4 ページ)

» 2019年03月29日 06時15分 公開
[今野大一ITmedia]
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編集者という仕事の「残酷さ」

吉田: ひょっとしたら「拡げる仕事」には、「これが才能だ」と思うものを選べる権利があるのかもしれないですね。

鳥嶋: 編集者の仕事の醍醐味をもう一つ話しましょう。編集者って実は何にもできないんですよね。最初に、「自分は何もできないこと」を知ることが必要なんですよ。僕は、「才能とはつかむもの」だと思っています。編集者という仕事の残酷なところは、一生懸命、鳥山明という才能をつかんでいても、もっといい才能が現れたら、これを捨てるんですよね。次の才能をつかみたいから。だから常に手を空っぽにしておく必要があるのです。

 だから僕ら編集者は何かができちゃいけないんです。いろんなことを理解はするけど、自分ではやらない。それは新しい才能をつかむためなのです。これが編集者という仕事の面白いところで、残酷なところだと思います。

 僕は、物事をなすために一番大切なのは目標設定だと考えています。まず自分がどこにいるのかということを考えてほしいのです。僕はよく新人漫画家と打ち合わせるときに、「今朝、家のドアを出るときに何を考えました?」と聞きます。この質問に答えられない人が案外多いのです。でも、どこへ行くのか目標が定まっていなければ、玄関から一歩も踏み出せないはずなんです。目標設定の大事さをきちんと考えていただきたいと思います。

 出版社は今後厳しい時代を迎えます。今まで安穏としていたこのビジネスモデルはもう崩壊しています。ただストロングポイントはあります。日本には漫画やゲーム、アニメがありますが、10代の才能を発見し育成して億万長者にできるのは漫画だけです。このノウハウを磨いてどこにつなげるのかを考えれば、漫画出版や漫画制作に関していえば、出版社はまだかなりのアドバンテージを持っていると思っています。(終わり)

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